夢破れた無名バンド、なぜ数十年後に大ブレイクした?号泣必至の実話『ドリーミン・ワイルド』監督インタビュー
「ケイシー・アフレックは“内なる葛藤”を表現できる」
―<ライト・イン・ザ・アティック>はドキュメンタリー映画化(※『シュガーマン奇跡に愛された男』[2012年])もされた、シクスト・ロドリゲスのレコードなどもリイシューしています。本作の製作にあたって、同レーベルのマット・サリバンとはどんな話をしましたか?
実は、彼には作品が完成してから初めて会えたんです。映画を作る時は色々調べてから撮影をはじめるので、彼がどんなルックスなのかは知っていたし、マット・サリバン役もクリス・メッシーナがとても素敵な表現をしてくれていたから、問題はありませんでした(笑)。
マット・サリバンはニューヨーク・タイムズの記事に大きく貢献していたので、脚本段階で彼の視点を入れることはとても大切なことだと思っていました。だから、この作品では大きな存在として描いています。
Ahead of @lightintheattic‘s 16th anniversary, we asked founder Matt Sullivan to pick a few of his favourite albums https://t.co/ovaKWTm1Rx pic.twitter.com/bEKGuT91Z7
— Barbican Centre (@BarbicanCentre) June 13, 2018
―ドニー役のケイシー・アフレックは過去にミュージシャンを演じたこともありますが、彼を主演に起用した理由は?
ケイシー・アフレックという役者は、内なる葛藤というものをセリフにせずとも表現できると思っていたからです。多くの役者たちがとらえることのできない、ちょっとした異質なニュアンスみたいなものをドニー本人は持っていましたが、ケイシーなら表現できると思っていたので、出演を決めてくれた時はすごく嬉しかったです。
『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』© 2022 Fruitland, LLC. All rights reserved.
―ドニーの妻ナンシーを演じたズーイー・デシャネルはミュージシャンとしても有名です。たとえば演奏シーンなどでは彼女から出たアイデアもありましたか?
ズーイー・デシャネルは素晴らしいミュージシャンだったので、ナンシーと協力しながらレコーディングをしていました。現場ではズーイーの意見も取り入れながら、バッキングボーカルとして携わってもらい、作品にとって最も良いかたちで歌声が使われています。
『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』© 2022 Fruitland, LLC. All rights reserved.
「親兄弟との関係性は独特の葛藤を生むものだと、よく分かっている」
―ドニーは夢に敗れたこと、ふたたび夢を掴み損ねるかもしれない恐怖、そして家族に金銭的な負担を強いた過去への後悔など、様々な苦悩を抱えています。そういった彼の心理には共感しましたか?
映画は自分が感じているものを表現しているものなので、当然、登場人物たちにも共感しています。私にも父と兄が2人いるので、兄弟や父と息子の関係性というのは独特の葛藤を生むものだということはよく理解しています。また、ケイシーにもベン・アフレックという兄がいるので、これまで葛藤することもあったと思います。私やケイシー、ドニー本人たちの経験を重ねて作っていくような作品でもありました。
『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』© 2022 Fruitland, LLC. All rights reserved.
―『ラブ&マーシー』は歴史的なアーティストの真の姿を描いていますが、本作は私たちの近所でも起こっていたかもしれない夢と挫折、ささやかな希望を描いています。どちらもオーソドックスな伝記映画というよりも、複雑に揺れ動く人間の心そのものがテーマになっていると感じましたが、この2作に明確な共通点はありますか?
共通しているテーマとは良い質問ですね(笑)。一言で言えば“アイデンティティ”でしょうか。自分のアイデンティティを見つける葛藤、アイデンティティの核の部分は何か、というテーマを含んでいます。
『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』©2022 Fruitland, LLC. All rights reserved.
―それでは最後に、日本の観客へメッセージをお願いします。
日本で公開されるということだけでもワクワクしています。ぜひ劇場で観てください!
『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』は2025年1月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開中
『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』
1979年、ワシントン州の田舎町でレコーディングされた1枚のアルバム「Dreamin’ Wild」。10代のドニーは兄とデュオを結成し、父が建てたスタジオで数々の楽曲を生み出した。情熱を注ぎ込んで作った音楽だったが、世間からは見向きもされず、夢に手が届くことはなかった。それから約30年後――。ドニーは、コレクターにより発見されたアルバムが再評価され、“埋もれた傑作”として人気を博していることを知る。しかし、思いがけない成功は、目を背けてきた過去や感情を呼び起こし……。
監督・脚本・製作:ビル・ポーラッド(『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』)
出演:ケイシー・アフレック、ノア・ジュプ、ズーイー・デシャネル、ウォルトン・ゴギンズ 、ボー・ブリッジス
制作年: | 2024 |
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2025年1月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開中