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欲に溺れた「ブラックフライデー暴動」が血の惨劇を呼ぶ!イーライ・ロスの激痛スプラッター『サンクスギビング』見どころ究極解説【後編】

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ライター:#ギンティ小林
欲に溺れた「ブラックフライデー暴動」が血の惨劇を呼ぶ!イーライ・ロスの激痛スプラッター『サンクスギビング』見どころ究極解説【後編】
『サンクスギビング』
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ジョン・カーヴァーって誰? まるで“イコライザー”な超大型新人殺人鬼

フェイク予告編では、ピルグリム(巡礼者)の扮装で正体を隠した殺人鬼だったが、ロスが「リブート版」と言い張る本作では、その設定をイイ感じにアップツーデート。そして誕生したのが、映画の舞台となるマサチューセッツ州プリマスの初代総督を1620年に務めた、巡礼者の指導者ジョン・カーヴァーのお面で正体を隠し、肉たたきハンマーやトウモロコシを突き刺すコーンホルダーなど、感謝祭ディナーに関係するアイテムを凶器に使うという限度を超えた働き者。通称ジョン・カーヴァー。彼が被るお面は劇中、感謝祭用に配られている既製品という設定である。

ちなみに僕はレザーフェイスやジェイソンなどのフィギュアを集めるぐらいホラー映画の殺人鬼が大好物。でも、『サプライズ』(2011年)の殺人鬼のように既製品のお面を被る殺人鬼は、(映画自体はサイコーなのだが)正直ノレなかった。正体を隠すにしても、レザーフェイスやマイケルみたいに個性をスパークさせてくれないと……という嗜好なので、ジョン・カーヴァーも鑑賞前は正直グッと来ないかも……と思っていた僕は大馬鹿野郎でした!

映画を観ていただいたらわかりますが、ジョン・カーヴァー様は本当に魅力的な超大型新人殺人鬼! しかも、ネタバレになるので具体的には書かかないが、これまでスラッシャー映画に登場した殺人鬼が殺害現場でやったことがない、ある小粋かつ繊細な作業も披露してくる!

『サンクスギビング』

さらに言うと、彼が殺すのは老いも若きも全員、ブラックフライデー事件に関係ある者ばかり。つまり「身勝手」、「欲深い」、「承認欲求」というワードがしっくり馴染んだ、共感の余地が1ミクロンもない人でなし。ついでに書くと、倫理観が後戻りできないぐらいバグったSNS中毒者もいる。

そんなわけで、ジョン・カーヴァーの殺害シーンを観ていて、被害者に「早く逃げて!」と思うのではなく、「カーヴァー、そんなクズ野郎はさっさと殺してくれ!」と、まるでイーライ・ロス版『イコライザー』を観ているかのような気持ちで殺人鬼を応援してしまう事態になること間違いなし!

『サンクスギビング』

実際、彼が披露する俺ジナルきわまりない殺害シーンの中には、「この殺し方、『イコライザー』シリーズでロバート・マッコールさんにもやっていただきたい!」と心の底から願わずにはいられないくらいカッコいい場面もある! つまり本作は、「人に迷惑をかけ続けている奴は、ろくな死に方をしないんだ」という大事な教訓を授けてくださる道徳映画にもなっている。

そうは言ってもジョン・カーヴァーは、殺した人間のボディを感謝祭ディナーの食材にしちゃうアレな感性のオーナーなのだが……。

『サンクスギビング』

すべてCG無しの特殊メイク! 常識をフライングした人体損壊描写の数々

『サンクスギビング』には、感謝祭パレード中の殺人、トランポリン殺人、人間七面鳥の刑に処すシーンなどのフェイク予告編の名場面がゴージャスにアップツーデートされているので、期待に胸をパンパンにさせていてください! ちなみにフェイク予告編では殺人鬼を共同脚本家のジェフ・レンデルが演じていたが、今回は殺人者の正体がバレないように、ジョン・カーヴァーはシーンごとに違う俳優を起用している。

『サンクスギビング』

そういう本作なので、イーライ・ロスが監督する際に最もこだわったのは当然、人体が常識をフライングした状態になってしまう葬儀屋泣かせの殺害シーン。

すべての殺害シーンは、観客が望む恐怖と血の量を満足させるものじゃないといけない。しかも、フェイク予告編で僕が作り上げたレベルに合わせるのではなく、それを上回るものにしたかった。もしも、それが達成できていないのなら、僕は死んでいただろう。

……という気迫で本作に挑んだロスは、先にも書いたように本作の殺害&人体破壊シーンを描くために、CGを使う気はビタ一文もなかった。この映画の残酷シーンは、すべて80年代スラッシャー映画と同じ特殊メイクで描くつもりだった。

僕が好きな映画の好きな殺戮シーンを思い浮かべると、CGを使ったものはひとつもない。すべて特殊メイクで表現したものばかりだ。特殊メイクを使ったシーンは感情的な反応が違ってくるんだよ。

特殊メイクに対して並々ならぬ愛着を抱くロスは、本作で登場人物の死に様や死体のダミーをクリエイトする特殊メイク・特殊造形デザインを、『ザ・ホエール』(2022年)でブレンダン・フレイザーを巨体の男に変身させてアカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したエイドリアン・モロットに依頼した。ちなみに彼は『ミーガン』(2022年)の特殊メイクアップも担当した御方である。

「あんなにもリアルに、そして素早く死体を作り上げられる人を見たことがない!」とモロットのスキルを称賛するロスは、『デス・ウィッシュ』(2018年)、『ルイスと不思議の時計』(2018年)でも彼に特殊メイクを依頼している。これまで組んできた作品以上に特殊メイクが映画の要であると考えていたロスは、本作の準備期間の早い段階からモロットと打ち合わせをしていた。

早くも続編決定! 新たなホラー・アイコンの誕生を目撃せよ

そうして彼らは、「どうすれば、これまで作られた映画よりも凄い殺人シーンを作れるのか?」というシンプルかつ難解な問題に真正面から挑んだ。その結果、本作はジョン・カーヴァーが標的の一人々々に対して異なる凶器を使用して、俺ジナルかつ芸の細かい殺害スタイルをアピールして、殺された人は皆、実に斬新かつ個性的な人体破壊を見せてくれる、というロスの真心と気合が極限までこもった作品に仕上がっている。

……って、本作鑑賞前にその心意気を知った時、本音を書かせてもらうと、画期的にヘタレなハートのオーナーである僕はロスに対して、そんなに真心を込めなくてもいいよ! あんたが監督するホラー映画の人体破壊シーンはいつだって眼を背けたくなるぐらいグロくて怖すぎるから! なんならマネキンをブツ切りにするぐらいのクオリティでもいいのに……と思った。でも鑑賞してみると、あら不思議。どれもロス監督作の魅力であるギャグのサジ加減が絶妙にトッピングされた残虐シーンばかりなので、映画を観はじめたら最後まで目が離せないシステムになっているのだ。

『サンクスギビング』

とはいってもロス監督作なので、いくつかの残酷シーンでは思わず目を閉じてしまったが……。そんな本作でのモロットの仕事ぶりについてロスは、こう絶賛している。

彼の職人技は誰にも負けない。今まで見たなかで最も美しい頭部と体の部位を作り上げてくれた。本当に美しいものだった! でも、ダミーの頭部がどんなに美しくても、肉叩きハンマーで潰されなければならないんだけど。

『サンクスギビング』

このようにイーライ・ロスたちが精魂込めて作り上げた、殺人感謝祭ムービーは全米で公開されると大ヒットを記録! 初登場でこれだけイイ仕事をアピールしたジョン・カーヴァーは人気者になり、レザーフェイス、ジェイソン、マイケル・マイヤーズ、エイリアン、プレデターといったレジェンド・キャラクターのフィギュアをリリースしてきたアメリカのメーカー<NECA>からフィギュア化されることが決定。そして映画の続編の制作も決定! その続編についてロスは、こう語っている。

『13日の金曜日PART2』(1981年)では痩せていたジェイソンが、『13日の金曜日PART3』(1982年)でマッチョになって登場したように、『サンクスギビング』の続編のジョン・カーヴァーもマッチョになっているかもしれない! 彼は今、ジェイソンと同じスラッシャー・ジムに通っていて、ステロイドの獣になっているかもしれないから(笑)。

イーライ・ロスって人は、いちいち気の利いたコメントをしてくれる方である。そんなわけでまずは皆さん、12月29日から公開される『サンクスギビング』で、ジョン・カーヴァーの初陣を観戦しようじゃありませんか! この映画、今後のホラー映画のマスターピースになること間違いなし! な革新的かつキメの細かい仕上がりをアピールしてくる映画ですから!

『サンクスギビング』イーライ・ロス監督

文:ギンティ小林

『サンクスギビング』は2023年12月29日(金)より全国公開

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『サンクスギビング』

「感謝祭(=サンクスギビング)」発祥の地、マサチューセッツ州プリマス。1年に1度の祝祭に沸き立つ人々だったが、突如、ダイナーで働く女性が何者かに惨殺される事件が起こる。

その後も一人、また一人と消えてゆく住民たち。彼らは皆、調理器具を凶器に、感謝祭の食卓に並ぶご馳走に模した残忍なやり口で殺害されていた。

街中が恐怖のどん底に突き落とされるなか、地元の高校の仲良しグループのジェシカたちは、ジョン・カーヴァーを名乗る謎のインスタグラムの投稿にタグ付けされたことに気づく。

そこには豪華な食卓が用意され、自分たちの名札が意味深に配されていた……。

監督:イーライ・ロス
脚本:イーライ・ロス ジェフ・レンデル

出演:パトリック・デンプシー アディソン・レイ
   マイロ・マンハイム ジーナ・ガーション

制作年: 2023