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『カリフォルニア・ディストラクション』“映画業界の天変地異”ことアサイラム社渾身のディザスター作品

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ライター:#知的風ハット
『カリフォルニア・ディストラクション』“映画業界の天変地異”ことアサイラム社渾身のディザスター作品
『カリフォルニア・ディストラクション』©2015 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.
「カリフォルニアを襲う超巨大地震の中で家族を救うために奔走する親」というストーリーのアノ大作を“超特急・超低予算で模倣する映画制作会社アサイラム”流に変換してみると……意外と普通の映画になってしまうのかもしれない。だが最後まで気を抜かずに観ていただきたい。本作は、アサイラム作品なのだ。

今回のアサイラム作品、本家よりちょっと作品名がカッコいいね

『カリフォルニア・ディストラクション』©2015 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

2015年に公開された『カリフォルニア・ダウン』という作品を、皆様はもうご覧になっているだろうか。突如としてカリフォルニア州を襲った大地震に、ザ・ロックことドウェイン・ジョンソン演じるレスキュー隊員が、家族を救うべく奮闘する……というディザスター・ムービーだ。ストーリーこそやや大味でありきたりなきらいはあるが、映像面の迫力がシンプルに魅力的で、なかなか面白い映画ではあるだろう。

……ところで今日も話は変わるが、かねてより便乗商法を得意とする米国の映画会社・アサイラムが、上述の大作を無視するはずもなかった。当然彼らは先手を打って、当時『カリフォルニア・ダウン』に乗っかった模倣作品をリリースしている。その名も『カリフォルニア・ディストラクション』。本家よりちょっと名前がかっこいいね。

『カリフォルニア・ディストラクション』©2015 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

概要としては『カリフォルニア・ダウン』と同様に、カリフォルニア州が大地震で崩壊寸前の危機に陥ったので、主人公が家族を救うべく奮闘する……というディザスター・ムービーである。「そこまで内容一緒なら普通に『カリフォルニア・ダウン』の方観るわ」とか思わないで欲しい。
まあもしかするとその判断は正しいのかもしれないが、別に片方しか観ちゃいけないなんてこともないので、とにかく今回は『カリフォルニア・ディストラクション』の方の見所について語っていこう。

災害の予知に関する研究を続けている地震学者・モリーは、血の繋がらない年頃の娘・アリとの親子関係に手を焼いていた。

ある日、モリーは突然「ロサンゼルスに大地震が直撃する」という情報を、最新の地震予知システムから入手する。彼女は慌てて周囲の人間に避難を勧告するが、早速発生した“前震”で既に、カリフォルニア州は阿鼻叫喚の地獄絵図。続けて最も危険な“本震”が数時間後に迫るが、何とロスのホテルで働いているアリが、客と一緒にエレベーターに閉じ込められたため、身動きが取れない状況に。また操縦士である夫・ハンクが娘の救助に向かおうとはしたものの、彼の持つヘリコプターが故障を起こしてしまい、すぐには動けないという。

他に打つ手を失くしたモリーは、娘の彼氏である青年・ニックと共に、我が子を救出するべく崩壊間近なロサンゼルスへと突入する……。

というのが本作の概要である。

ディザスター・ムービーのセオリーを詰め込んだ定番作……を超えさせる“アレ”の登場

『カリフォルニア・ディストラクション』©2015 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

本家『カリフォルニア・ダウン』、あるいは同じ系統のディザスター・ムービーを数本でも見たことのある方にとって、『カリフォルニア・ディストラクション』の脚本は新鮮味を欠いた、ありふれた筋書に映るかもしれない。事実、本作にはその手の映画でごまんと見られる設定が、これでもかとギチギチに詰まっている。例えば、上述の「密室に閉じ込められる娘」とか、「密室に閉じ込められてメチャクチャ取り乱す人」とか、「密室に閉じ込められた途端なんか持病の薬が切れて死にそうになる人」辺りのキャラクターが顕著だ。

また、「継母に反発心を抱く娘」や「教育方針は堅物気味だが、本心では子を愛している親」の関係修復を軸に据えた、家族愛のテーマもいささか平凡ではある。断じて悪いわけではないが、ディザスター・ムービーの主題としてはあまりに定番過ぎて、もう一つ他に何か欲しいというタイプの代物だ。

ただし! 本作は『カリフォルニア・ダウン』とは違い、中盤に一瞬CGのデカいカバが出てくる。更にそのデカいカバが、凄い勢いで主人公達に襲いかかってくるという、アニマル・パニック的な見所まで存在するのだ。これは見逃せない。お世辞にもCGは良いとは言えず、出番もごく短いのだが、一見凡百のディザスター・ムービーかと思わせておいて突如乱入してくる巨大生物には、スーパーで買ったしらすの中にちっちゃいタコが入っていたときくらいのプチお得感がある。そういう気持ちは忘れないでおきたいものである。

後は、まあ、大体“普通”の映画だ。だが劇中で発生する、建築物の倒壊、動物の暴走、ガス漏れなどの各種イベントはそれなりに豊富で、極端に無意味な会話のやり取りも当社比で少ないように思えたので、アサイラム作品という枠組みの中では一定の品質を誇る逸品には違いない。クライマックスに入った瞬間から、用済みと言わんばかりにぽこぽこ死んでいく気の毒な脇役達などの、一周して笑える見所もないわけではない。何より他のトンデモ全開なアサイラム作品と一緒に見比べることで、災害時に噛み締める日々の平和の尊さのごとく、本作の“普通”さを味わうことができるだろう。

“映画業界の天変地異”ことアサイラム作品というジャンルへの理解を深めていきたい方は、しっかり安全対策を済ませた上で、ぜひとも本作の鑑賞を一度検討してみて欲しい。

文:知的風ハット

『カリフォルニア・ディストラクション』¥4,800(税抜)発売中:アルバトロス

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『カリフォルニア・ディストラクション』

カリフォルニア州を超巨大地震が襲い、街がパニックに陥るなか、娘を助けるために地質学者の母が奔走する。
加速する大地殻変動!美しい西海岸は太平洋に沈んでしまうのか!?

制作年: 2015
監督:
出演: