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ハリウッドの異端児! デニス・ホッパーが映画に捧げた超刺激的なラブレター『ラストムービー』

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ライター:#市川夕太郎
ハリウッドの異端児! デニス・ホッパーが映画に捧げた超刺激的なラブレター『ラストムービー』
『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

デニス・ホッパーのお蔵入り作品ついに公開

アメリカン・ニューシネマを代表するイージー★ライダー』(1969年)を監督し、第42回(1969年)のアカデミー賞助演男優賞(ジャック・ニコルソン)と脚本賞にノミネートされ、一躍時の人となったデニス・ホッパー。そんな彼が「ハリウッドの異端児」と呼ばれる決定的な所以となった作品が、本作『ラストムービー』だ。

『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

ペルーの山間の小さな村。そこではハリウッドからやってきた映画の撮影隊が西部劇を撮影している。それまで静かだった平穏な村に鳴り響く怒声、空を切り裂くような銃声、暴れる馬のわめき声。「映画」を知らない村人たちは、目の前で繰り広げられる非日常の暴力に目を奪われている。

『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

そんな中、スタントマンとして撮影に参加しているカンザス(デニス・ホッパー)は、美しい自然とそこで出会ったマリア(ステラ・ガルシア)に魅了され、撮影隊が帰った後も村に残ることにする。一方、映画撮影に魅了された村人たちに変化が。なんと彼らは、暴力も何もかもが本物の「映画」を作りはじめる……。

『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

どこまでもとことんカオスな「映画史上稀に見る難解な映画」?

映画ファンたちの間では、しばし「映画史上稀に見る難解な映画」として語られることがある『ラストムービー』(1971年)。タイトル・クレジットが現れる奇妙なタイミングから、縦横無尽に飛び回る時間軸、そして度々挿入される映像が途切れて真っ黒の画面に“Scene Missing”の文字、おまけに「ひょっとしたらNGシーンなのでは?」とすら思える場面も入り混じり、映画製作というある種儀式的な行為の狂気が最高潮に達するラストまで、とことん、どこまでもカオス。あなたがハリウッド産娯楽映画しか観ていないとすれば、間違いなく面喰らうだろう。

『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

それもそのはず、本作は60年代当時のヒッピー文化と密接で、ヒッピーたちが既存の社会から道を外れて自由を追い求めたように、ホッパーも既存のハリウッド的映画作りから解き放たれ、どこまでも自由な映画を求めていた。ロケ地ペルーへの移動の飛行機の中から撮影中、編集作業に至るまでスタッフ・キャストたちは酒とマリファナとLSDにどっぷりだったとか。

『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

そうして完成した映画を観た、当時ユニバーサル・スタジオのトップでハリウッドの帝王であったルー・ワッサーマンは、そのあまりのわけのわからなさに再編集を指示。しかしホッパーはこれを拒否し、映画は短期間の上映のみでほぼお蔵入りとなってしまった。そんなことをキッカケにいよいよハリウッドから遠ざかるホッパーだったが、劇中で飲めや歌えやの大騒ぎをする撮影隊のパーティを抜け出し、ひとり佇んでふいに涙を流すカンザスの姿は、この映画以降のホッパー自身のようだ。

『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

芸術作品が持っているはずの“自由”を再認識させられる映画

しかし、本作は本当に難解なのだろうか? いま観るとそんなことはまったくなく、そもそも『ラストムービー』というタイトルひとつで、映画作りとは何なのか? そして、映画とは何なのか? という問いかけがあることはわかる。映画というものがなかった村に「映画」が新種のウイルスの如く蔓延する様は映画の魔力を語り、フィルムを切り刻んでどこにもない映画を追い求めた苦闘っぷりは本来、映画、果ては芸術が持っているはずの自由さを再認識できる。『ラストムービー』はデニス・ホッパー流、超刺激的な映画へのラブレターなのだ。

『ラストムービー』©1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

文:市川力夫

『ラストムービー』は2019年12月20日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

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『ラストムービー』

ペルーのクスコにある小さな村で、ハリウッドからやってきた監督(サミュエル・フラー)一行は、ビリー・ザ・キッドの生涯をもとにした西部劇を撮影している。初めて映画の撮影現場を見る村人たちは、暴力に溢れた撮影風景を恐怖と好奇に満ちた目で眺めている。スタントマンのカンザス(デニス・ホッパー)も撮影に参加するが、ハリウッドのスノッブさを嫌う彼は、撮影隊の乱痴気騒ぎをうんざりとした顔で見つめている。
撮影隊が帰った後も村に残ったカンザスは、現地で知り合ったペルー人女性マリア(ステラ・ガルシア)と暮らし始め、自然のなかで彼女と過ごす幸福に酔いしれる。だが金塊探しに妄執する友人ネヴィル(ドン・ゴードン)を介して知り合った裕福なアメリカ人、アンダーソン夫人(ジュリー・アダムス)らと戯れるうち、カンザスは徐々に酒とドラッグの世界へはまり込んでいく。
一方、アメリカ人たちの撮影に感化された村人たちは、自分たちの手で“本物の映画”を作ろうと村に集結していた。彼らは木製のカメラやマイクを手に撮影風景を模倣するが、演技という虚構を理解しないこの撮影隊の前では、すべての行為は現実に行われなければいけない。たとえ暴力や死でさえも。
やがてドラッグの見せる幻覚に酩酊していたカンザスは、“本物の映画”で処刑される白人役として担ぎ出され、奇妙で不条理な世界に入り込んでいく――。

制作年: 1971
監督:
出演: