ドラゴンボール × スラムダンクにフル・モンティ、そしてスマッシング・パンプキンズ! 韓国映画界のヒットメーカーが『ハイファイブ』に込めたメッセージ
超能力を手にしたからといって、すぐに立派なヒーローになれるわけじゃない。些細なことに力を使い、ときにぶつかり合いながらも、仲間とともに大きな困難へ立ち向かっていく。映画『ハイファイブ』でカン・ヒョンチョル監督が目指したのは、子供の頃に夢中になった漫画のように、気分爽快に楽しめる映画だった。
その発想を支えるのは、スーパーヒーロー映画だけではない。異なる個性が集まり、一つの目標へ向かう『フル・モンティ』への愛着や、『スラムダンク』『ドラゴンボール』といった日本の漫画・アニメからの影響も息づいている。スマッシング・パンプキンズの楽曲に乗せて少女が坂道を駆け上がる場面には、思春期のもどかしさと、あふれるエネルギーを重ねた。
撮影は2021年に終了したものの、VFXの完成度を追求するため、作品を届けるまでには長い時間を要した。コロナ禍や過酷な撮影環境を乗り越えた制作の裏側、親しい友人でもあるアン・ジェホンやオ・ジョンセの魅力、そして人が集まって映画を作ることと、登場人物たちの絆に込めた思いまで。監督に『ハイファイブ』を形作った創作の源泉を聞いた。
自分が気軽に楽しめる映画を撮りたかった
——7年ぶりの作品で、立ち上げ当初から構想されていたようですが、本作が特別に時間のかかった理由などがあれば教えていただけないでしょうか。
監督: 撮影自体は、2021年に終えていましたが、これほど時間を要してしまった理由は、今回VFXを沢山駆使しているからです。完成度を高めるために、かなりの時間が必要でした。またコロナ禍の影響もありました。撮影中にパンデミックの時期に重なってしまい、スタッフ・キャストがマスクを着用しながら撮影しました。俳優さんたちもプライベートで配慮していたりと、悪条件が重なってしまいましたよ。さらに気候も本当に暑かったりと悪条件が続きましたが、なんとか乗り越えて作品が完成出来ました。
——韓国メディアで「自分が気軽に楽しめる映画を撮りたかった」といった話を見たのですが、そのような気持ちになったのはなぜでしょうか。
監督: 色々な作品を撮ってフィルムグラフィがどんどん連なっていく中で、過去の作品と別のものを撮りたいという気持ちが常にあります。今回も子供の頃に読んでいた気分爽快な漫画の様な、映画を撮りたいと思っていました。
——スーパーヒーロー作品などはご覧になりますか?また、影響を受けた作品、お気に入りの漫画などあるのでしょうか?
監督: スーパーヒーロー作品というよりも、何人ものキャラクターが登場して、みんなで結束して困難を乗り越えていく、あるいは、1つの目標に向かって一緒に進んでいく。以前からそういったタイプのイギリス映画を好んでよく観ていました。その中でも『フル・モンティ』という作品が好きで、おそらく無意識の中でも影響をたくさん受けていると思います。マーベルの映画も気軽に観られるので、普段からよく観ています。
日本の漫画の要素もたくさん取り入れていますね。好きな作品が多くて1つは選びにいくのですが、本作では『スラムダンク』をオマージュしたシーンもありますよ。
『ハイファイブ!』© 2025 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.
——イ・ジェインさんが演じているキャラクター(ワンソ)が、登り坂を超高速で登る時に、スマッシング・パンプキンズの曲が流れています。中高生時代に好きだったとお聞きしました。他に好きなバンドや楽曲があれば教えていただけますか?
監督: あまりにも多すぎてなかなか挙げられないのですが、スマッシング・パンプキンズの音楽は、1つのカテゴリーになるぐらい影響を受けています。中高生の時に特に好んで聴いていたのは、ロックとメタルが好きでしたね。子供の頃からレッド・ツェッペリンや、ピンク・フロイドもよく聴いていました。
年を重ねていく中でジャズも聴くようになりましたし、クラシックも聴くようになりました。様々なジャンルの音楽を聴いていますよ。音楽を聴く時間を作って集中して聴いています。
アン・ジェホンとオ・ジョンセはそれぞれ違うタイプの天才
——アン・ジェホンさんの長年のファンだったとお聞きしました。キャスティングした理由を教えていただけますでしょうか。
監督: 元々アン・ジェホンさんのファンでしたが、実は近所に住んでいる隣人と言いますか、親しい友達でもあるんですよ。誰よりも知っているとまでは言えないですが、私なりに彼本来の魅力を知っているつもりです。今回登場人物の中で、唯一アン・ジェホンさんだけは当て書きをしてシナリオを書きました。そのような理由があったので、特に他の作品を探して観るまでもありませんでした。
——同じくアン・ジェホンさんについてなんですけども、彼の俳優としての魅力とか、本編で「凄さがわかる」というシーンがあれば教えていただけますでしょうか。
監督: アン・ジェホンさんは、私たちの身近にいるような、まるで友人のような印象を与えてくれます。私たちと同じ目の高さを合わせてくれるような俳優で、我々の代わりに体現してくれる。その点が一番の魅力だと思っています。また凄いと思えるシーンは、自身が超能力を持っているにも関わらず、その能力をふんだんに生かさずちょっとした事で活用する演技が上手なんです。リコーダーを吹くシー ンがとても好きで、観客の皆さんも気に入ってくれると思います。
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——続いてキャストの質問をまたお伺いできればと思うんですけども、『スイング・キッズ』や『タチャ』に出演しているオ・ジョンセさん、今回もキャスティングした理由を教えていただけないでしょうか。
監督: 実はオ・ジョンセさんも、アン・ジェホンさんと同じで友達なんです。出会いのきっかけは、映画を通して出会いました。今まで一緒に作品を撮ってきており、逆境を乗り越えてきた戦友のような存在で、俳優として天才的な才能があると思っています。笑わせようと思わなくても、彼なら笑わせられる。笑いの中に哀愁があるというところが魅力だと思っていて、オ・ジョンセさんのことを考えながらシナリオを書いていました。これからもまた一緒に、作品作りをすることになると思います。
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——ありがとうございます。続いてパク・ジニョンさんについて伺いたいんですけども、今までにない悪役としてのオファーをした理由は? 魅力など教えてください。
監督: 確かにパク・ジニョンさんが演じた役は、今回は悪役だと言えます。ただ、悪役だからオファーしたのではなくて、適任者・適役は誰なのかと考えてお願いしました。この役は、もう自分の欲望に向かって突き進むような人物で正当化していきます。そんな強烈なイメー ジのあるキャラクターを、パク・ジニョンさんに演じてもらったら合うだろうなと思いました。
彼の魅力は、とてもイケメンなところですね(笑)またとても誠実な所です。パク・ジニョンさんには、シン・グさんの若い頃を演じてもらいました。シン・グさんの口調を真似なければいけなかったのですが、すごく難しかったと思います。ですが、本当に努力を重ねて練習してくれたので、素晴らしい役が出来上がったと思います。誠実さに拍手をおくりたいと思います。
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——カメオ出演の顔ぶれ(イ・ドンフィさん、パク・ヒョンシクさん、D.O.さんなど)もすごく豪華です。
監督:この映画がスター トした時に、真っ先に皆さんが知っている俳優さんがオー プニングシーンに登場したら、「この人たちも超能力者かもしれない!」と驚いてくれるかと思ったんですね。1つのメタファー になればと思い、今回キャスティングをしました。多くの方が話題に挙げてくれましたね。こちらの意図が伝わったかどうかは分かりませんが、皆さん喜んでくれました。
アクションシーンは『ドラゴンボール』の様にしたい
——アクションシーンについてですが、『ドラゴンボール』のような戦闘シーンがあったのですが、マーベルのようなアクションよりも中国映画っぽい、カンフー映画のような感じがしました。
監督: 序盤でヒーローたちは、超能力を使いますが、些細なことに使ったりしています。そういったシーンが多数登場しますが、それと対比させるように後半では、スケールの大きな戦闘シーンを入れようと思いました。そのシーンを考えている時は、カンフー映画的なイメージではなくて、まさに『ドラゴンボール』の様にしたいと思ったんです。日本の漫画・アニメの様な格闘シーンを連想させるようなものになっているのではないかなと思います。特にその日本のアニメの格闘シーンの中でも、躍動感があるようなシー ンに似ているかもしれないですね。
——監督の作品群は「人生をやり直せる」「人との繋がりの尊さ」といったメッセー ジが感じ取れるのですが、『ハイファイブ』で描きたかったメッセージは何でしょうか?
監督:何人ものキャラクターが登場して成長していくような物語で、お互いの存在の大切さを知っていくようなストーリーがとても好きなんです。それは映画作りと似ていて、大勢の人が集まって一連の過程を共にしながら作っていく。そういった部分にも魅力を感じているので、実際の映画作りとストーリーの中で同じようなメッセージとして込めています。
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——最後の終わり方なども続編があるような雰囲気が漂っていたのですが、本作の続編を作る構想はあったりしますか?
監督: それについては私もまだわからないので、運命に任せたいと思っています。もし日本の観客の皆さんが観てくださって爆発的な反応があれば、可能ではないかなと思っています。
——是非、続編が観たいです!では最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
監督:『ハイファイブ』という作品は、映画館で隣の席に座った方と一緒に笑いながら、そして隣の方の息遣いを感じながら観るとより楽しめると思います。そういった状況になった瞬間に、完成される作品だと思っています。映画館で爽やかな気持ちになって、どうか楽しんで観てください!
カン・ヒョンチョル監督
『ハイファイブ!』は全国公開中