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掲載日:2026年10月9日 文=BANGER!!!編集部
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復讐ものを観てすっきりしたい人は、ここで引き返したほうがいい。『外道の歌』は、すっきりさせてくれない。
渡邊ダイスケの漫画『善悪の屑』『外道の歌』(少年画報社)を原作にした、DMM TVのオリジナルドラマである。主演は窪塚洋介と亀梨和也、監督は白石晃士。SEASON1に続いて、2026年4月9日にSEASON2の配信が始まり、いまは2シーズンとも配信されている。DMMの公式発表によれば、2026年上半期のDMM TV総合視聴ランキングで1位だった。
「この本、おいくらですか?」
舞台はカモメ古書店という小さな古本屋だ。店をやっているのはカモこと鴨ノ目武と、トラこと島田虎信。二人には裏の仕事がある。法では裁けなかった悪党に、被害者や遺族に代わって制裁を加える。復讐の代行業だ。
依頼の入口がいい。客は店に来て、ニーチェの『善悪の彼岸』を手に取り、「この本、おいくらですか?」と訊く。それが合言葉になっている。善と悪の向こう側、という題の本を合図に選ぶあたりに、この物語の自覚が出ている。二人は自分たちを正義だとは思っていない。題名のとおり、外道の側に立っていると知ったうえでやっている。
原作の『善悪の屑』は、読んでいて胸の悪くなる犯罪を次々に扱い、そのたびに読者へ「あなたならどうする」と突きつけてきた漫画だ。続く『外道の歌』では、カモとトラ自身がなぜこの稼業に行き着いたのかにも筆が及ぶ。復讐を請け負う側も、何かを奪われた人間である。ドラマが2シーズンをかけられることの意味は大きい。依頼をこなす一話ごとの面白さと、二人の過去がにじんでくる連続ものの面白さを、両方やれるからだ。
だから、制裁の場面に爽快感がない。悪党は確かにひどい。こちらも怒っている。それでも事が済んだあと、依頼した人の顔は晴れない。失ったものは戻らないからだ。ドラマはそこから目をそらさない。私がこの作品を信用しているのは、その一点による。
白石晃士がカメラを持つ意味
監督の名前を見て、ホラー好きは身構えたはずだ。白石晃士。『ノロイ』や『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』のシリーズで、作りものと記録の境目を溶かしてきた人。『貞子vs伽椰子』のような大きな企画でも、暴力がすぐ隣の部屋で起きている、あの嫌な近さを手放さなかった。
その人が、実際の事件を思わせる題材を多く含む原作を撮る。怖がらせるための暴力と、痛みを分からせるための暴力は違う。白石晃士は後者を撮れる数少ない監督だと私は思っている。画面が派手に盛り上がらないぶん、殴る音や沈黙が長く残る。
窪塚洋介のカモは、ほとんど表情を動かさない。『GO』や『ピンポン』で見せた、あの跳ねるような身体を封じて、低い温度のまま立っている。対する亀梨和也のトラは関西弁でよく喋り、よく怒る。熱い男が横にいることで、カモの静けさが不気味に見えてくる。二人の温度差そのものが、復讐という行為への二通りの態度になっている。
この並びにも少し書き足しておく。どちらも若い頃から華のある役を背負ってきた俳優で、画面の真ん中に立つことに慣れている。その二人が、人目を避けて生きる古本屋の男たちを演じる。華を消そうとしても消えきらない。消えきらない華が、この二人はかつて別の人生を持っていたのだ、という気配に変わる。配役の時点で、物語の半分は語られていると思う。
脇には南沙良、森崎ウィンがいて、SEASON2からはあのが加わった。SEASON2では「朝食会」と呼ばれる謎の組織が描かれる。個別の依頼を重ねてきた物語が、もっと大きな相手に向かっていく格好だ。
観ないほうがいい人
はっきり書く。暴力の描写が強い。犯罪の被害、とくに弱い立場の人が傷つけられる事件が題材になる。制裁の場面も容赦がない。
現実の事件報道でしんどくなる人、家族や子どもが被害に遭う話を受け止める余裕がいまない人には勧めない。連休に気持ちを休めたいなら、別の作品を選んでほしい。食事をしながら流す類のドラマでもない。
もうひとつ、答えをくれないところが弱点にもなる。私刑は許されるのか。観終わっても結論は出ない。割り切った勧善懲悪を求める人は、もやもやを抱えたまま画面を閉じることになる。
それでも推すのは、そのもやもやが作り手の誠実さだと思うからだ。怒りを娯楽として消費させて終わり、にしない。被害者の側に立つとはどういうことかを、重いまま渡してくる。
連休で2シーズン、という時間の使い方
2シーズンとも配信されているので、待たされることがない。1日目にSEASON1、2日目にSEASON2と分けるのが体にも心にも無理がないと思う。続けて観るには重い。あいだに散歩でも挟んだほうがいい。
向いているのは、韓国のノワール映画や、救いの少ない犯罪ドラマを好んで観てきた人。原作を読んでいて、実写化を疑っている人にも見せたい。窪塚洋介という配役が、紙の上のあの目つきにどこまで届いているかを確かめてほしい。そして、上半期に一番観られた作品が何だったのかを自分の目で確かめたい人。
これだけ重い題材が、DMM TVの上半期の首位にいる。軽く楽しめるものばかりが求められているわけではない。その証拠として、私は少し嬉しかった。
『外道の歌』はDMM TVのオリジナルで、独占配信だ。SEASON1もSEASON2も、ここでしか観られない。月額は550円(税込・Webブラウザから登録した場合)、アプリ経由の登録は650円。初回登録の人は14日間無料で、期間内に解約すれば料金は発生しない。
古本屋の扉は、誰に対しても開いているように見える。開けるかどうかは、自分の調子と相談して決めてほしい。
※本記事は2026年10月9日時点の情報です。配信状況・料金・配信期間は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。