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掲載日:2026年10月8日(2026年10月8日時点の情報)文=BANGER!!!編集部
※本記事の情報は2026年10月8日時点の情報です。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
題名で笑った人は、たぶんこのドラマに一度は刺される。
「付き合ってないのにセックスしたらあかん」。恋の妖精にそう叱られた直後に、主人公は一線を越えてしまう。そして好きな相手から「距離を置こう」と告げられる。『溺愛カレシの作り方 〜セから本命になる女の子の話〜』は、そこから始まる話だ。うまくいった恋の話とは違う。順番を間違えた人間が、間違えたあとでどう立て直すかの話である。
主演は与田祐希、相手役に野村周平。テレビ東京のドラマNEXTで10月7日に始まり、毎週水曜の深夜24時30分から放送されている。U-NEXTは各話を地上波より1週間早く独占先行配信していて、最初の配信は9月30日の21時だった。見放題の対象になっている。つまり3連休には、テレビでまだ流れていない先の回がU-NEXTに置かれていることになる。
「距離を置こう」の一言が、いちばん痛い
主人公の白井桜は市役所に勤めている。先輩の綿貫圭介に片思いをしている。派手なところのない、どこにでもいる社会人だ。
この設定の地味さが効いている。桜は恋愛の猛者ではない。駆け引きが得意なわけでもない。好きだという気持ちだけが先に走って、言葉にする前に関係のほうが進んでしまった。そういう人である。
曖昧な関係の苦しさは、経験した人にしか分からない種類のものだ。相手は優しい。連絡も来る。けれど自分が何者として隣にいるのかを、確かめる言葉がない。聞けば壊れる気がして、聞けない。聞かないまま時間だけが過ぎて、ある日、向こうから線を引かれる。圭介の「距離を置こう」は、ひどい言葉には聞こえない。穏やかで、大人で、だから余計にこたえる。怒鳴られたほうがまだ楽だ、と思ったことのある人は少なくないはずだ。
副題は「セから本命になる女の子の話」。あけすけな書き方だが、ここに作品の誠実さがあると私は思っている。きれいな言葉でぼかせば、桜の置かれた立場の惨めさもぼける。本命ではない、という事実をまず突きつける。そのうえで、本命になりたいという願いを、恥ずかしいものとして扱わない。ここがこの原作の芯だろう。
関西弁の妖精は、友だちの代わりだ
桜のそばには、拾った人形から現れた恋の妖精・ざくがいる。声は馬場園梓。冒頭に引いた台詞の主である。
妖精という仕掛けを、子どもだましだと感じる人もいるだろう。私は逆に、よく考えられた装置だと受け取った。こういう恋をしているとき、人は友だちに相談できない。相談すれば「やめときな」と言われるのが分かっているからだ。正論は聞きたくない。でも、誰かに叱ってほしい。その矛盾した気持ちの置き場所として、人間ではない相棒が要る。
しかもその声が馬場園梓だ。漫才で鍛えた間合いと、関西弁の遠慮のなさ。同じことを標準語で諭されたら説教になる。「あかん」と言われると、叱られているのに少し笑える。重くなりがちな題材に、息を抜く場所を作る声である。
原作はざくざくろの同名漫画で、コルクから出ている。作者の名前と妖精の名前が重なっているのは偶然ではないだろう。妖精の小言は、作者が読者に直接かけたかった言葉なのだと読める。
脚本は舘そらみといとう菜のは。監督は加藤綾佳、室井岳人、工藤渉。音楽は青木沙也果。オープニングテーマはasmiの「愛カロ厨」、エンディングは@onefiveの「バニララテ」。共演に山下リオ、橋本和太琉。
与田祐希と野村周平という取り合わせ
与田祐希は乃木坂46を卒業した人で、アイドル時代から、小柄な体と人懐こい表情で愛されてきた。その人が、この役を引き受けた。題名を見れば、楽な仕事でないことは分かる。かわいらしさだけでは通用しない。好かれたくて無理をする顔、傷ついたのに平気なふりをする顔を見せなければならない役だ。看板を守るより、俳優として一段踏み込むことを選んだのだと思う。
野村周平の圭介も、配役として納得がいく。野村周平は、悪気のなさと危うさを同時に出せる人である。圭介を単なる不誠実な男にしてしまえば、桜の恋はただの失敗談になる。なぜこの人を好きになったのか。それが画面から伝わらなければ、「本命になりたい」という願いに観る側は付き合えない。憎みきれない相手であること。この話の成否は、圭介の体温にかかっている。
合わない人は、はっきりいる
題名のとおり、大人に向けたドラマである。家族と一緒の居間で流す作品ではない。深夜の枠で放送されているのには理由がある。
いま、同じような関係の渦中にいる人にも、手放しでは勧められない。桜の姿に自分が重なって、笑う余裕がないかもしれない。少し時間が経って、あのころの自分を振り返れるようになってからのほうが、楽に観られると思う。
もう一つ。「本命になる」ことをゴールに置く物語に、引っかかりを覚える人もいるだろう。そんな相手なら離れたほうがいい、という意見はもっともだ。私も半分はそう思う。ただ、正しい判断ができるなら、最初から誰も苦しまない。分かっていても離れられない時期が人にはある。その時期の人間を、馬鹿にせずに描こうとしている。そこを買う。
話数にも触れておく。連休の時点でU-NEXTにあるのは先行分までで、物語は途中だ。結末まで一気に知りたい人は、放送が進むのを待ったほうがいい。
連休の深夜、一人で観る
勧めたいのは、まず、曖昧な関係を一度でも通ってきた人。当時は誰にも言えなかったことを、ざくが代わりに言ってくれる。
与田祐希をアイドルとして見てきた人にも。卒業後の彼女がどこへ向かおうとしているのか、この役の選び方に答えが出ている。
恋愛ドラマの甘さが苦手な人にも、意外と合うと思う。題は甘いが、出発点は苦い。溺愛にたどり着くまでの道のりのほうに重心がある。
U-NEXTでは、各話が地上波より1週間早く届く。水曜深夜の放送を待たずに先の展開を知っていられるのは、連続ドラマを追う楽しみとしては小さくない。連休に先行分まで観ておけば、次の回は一週間以内にやって来る。
月額は2,189円(税込)。初回登録の人は31日間の無料トライアルが使え、期間内に解約すれば料金は発生しない。
順番を間違えたことのない人は、このドラマを必要としない。間違えたことのある人だけが、桜を笑えずに見守ることになる。
※本記事は2026年10月8日時点の情報です。配信状況・料金・配信期間は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。