※ 本ページはプロモーションを含みます。
※本記事の情報は2026年9月30日時点の情報です。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
怒っていたはずの顔に、少しずつ笑みが浮かぶ。その変化が、最後の衝撃的な姿と同じくらい恐ろしい。『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』第2話「いじめっ娘」は、真木よう子の演技を通して、人を傷つけることに喜びを見いだす加虐性を映し出す。
主人公の栗子は、夫と穏やかな暮らしを送る女性。子どもの頃に自分がいじめていた直哉との再会をきっかけに、過去の記憶と歪んだ感情がよみがえっていく。ここで恐怖を生むのは、幽霊や怪物ではなく、人間同士の関係だ。現実にも起こりそうな出来事の中で、愛情と加虐性が絡み合う。その身近さが、物語の気味悪さを強めている。
真木の演技が特に怖いのは、栗子が子どもを叱る場面だ。問いかけているようで、どんな答えを返しても責められる。謝っても、今度は声の小ささをとがめられる。子どもに考えさせる形を取りながら、逃げ道を一つずつ塞いでいくやり取りが生々しい。言葉そのものだけでなく、相手を追い詰める声や表情が、日常の中にある暴力を浮かび上がらせる。
そして、叱るうちに怒りの表情が緩み、笑顔へと変わっていく。子どもを正そうとする態度の中から、傷つけることを楽しむ顔が現れる瞬間だ。真木はこの変化によって、栗子の中で昔の嗜虐性が再び動き始めたことを見せる。最後の異様な姿へ至る前から、表情の変化だけで十分に恐ろしい。
幼少期の栗子を演じる照井野々花も、不穏な表情で印象を残す。笑顔なのに、無邪気な楽しさが伝わってこない。説明的なナレーションや独白に頼らない作りだからこそ、その顔からにじむ感情が際立つ。少女時代の笑顔と、大人になった栗子が取り戻す笑顔。その両方が、時間が過ぎても消えていなかった加虐性を伝えている。
ドラマで加えられた両親の不仲という設定も、恐怖を現実に近づける。幼い栗子が聞く隣室の怒鳴り声と、大人になってから母親の愚痴を聞いた際に呼吸が乱れる姿が、過去と現在を結びつける。家庭の中にあった不穏さが、大人になっても身体の反応として残っている。こうした描写が、栗子を遠い世界の怪物ではなく、現実の人間として描き出す。
ラストは、真木の異様な姿が強烈なインパクトを残す。その極端なビジュアルには、一瞬コミカルにも見える奇妙さがある。しかし、子どもに何が起きるのかを考えると、場面の意味が変わる。画面に映る姿への驚きが、その先に続く出来事への恐怖につながっていく。