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『魔法少女まどか☆マギカ』TVシリーズ全12話|魔法少女の顔をしたダークファンタジーを、アニメを観ない大人に薦める理由
『魔法少女まどか☆マギカ』とは、2011年に放送された全12話のTVアニメで、Magica Quartet原作、虚淵玄脚本、新房昭之監督、シャフト制作によるダークファンタジーです。魔法少女ものの可愛らしい外見を持ちながら、第3話で作品の正体を明かし、深夜アニメの歴史を変えました。アニメをあまり観ない大人、ホラーやダークファンタジーが好きな人にこそ薦めたい12話です。
「魔法少女もの」という看板を、信じないでください
初めて『魔法少女まどか☆マギカ』の絵を見た大人の多くは、そこで判断を終えてしまいます。丸い顔、大きな目、ふりふりの衣装。蒼樹うめのキャラクター原案は、どこからどう見ても、少女向けの可愛らしいアニメの絵です。
私もそうでした。2011年の放送当時、周囲の熱狂を横目に、「自分の観るものではない」と決めつけていたのです。観たのは放送が終わってからで、観終わった夜に、自分の決めつけを心底恥じました。
この作品は、可愛らしい看板を掲げたまま、看板の裏で別のことをやっています。中学生の鹿目まどかが、白い謎の生き物キュゥべえから「願いをひとつ叶える代わりに魔法少女になってほしい」と持ちかけられる。転校生の暁美ほむらは、なぜか必死にそれを止めようとする。先輩の魔法少女・巴マミは、優しく、頼もしく、まどかを導いてくれる。
ここまでは、ジャンルの約束通りです。約束が破られるのは、第3話です。
そして第3話で何が起きるのかを、私はここに書きません。書かないことが、この記事でできる一番の親切だと思っています。
言えるのは、これだけです。第3話を観終えたとき、あなたは第1話と第2話で見せられたものすべてを、別の意味で思い出すことになります。優しかった先輩の笑顔、キュゥべえの無邪気な口調、ほむらの冷たさ。全部が反転します。そして「魔法少女になる」ことの意味が、契約という言葉の重さが、ようやく視界に入ってくる。
だから、できれば何も調べずに第3話まで辿り着いてください。検索すれば、あの回のことは一瞬で分かってしまうでしょう。分かってから観ても面白い作品ですが、知らずに観た衝撃は二度と手に入りません。1話あたり約25分、3話で1時間ちょっとです。その1時間だけ、私を信じてほしいのです。
虚淵玄という脚本家の、優しさのない誠実さ
『魔法少女まどか☆マギカ』の脚本を書いたのは虚淵玄です。ニトロプラス出身で、暴力と絶望を真正面から描いてきた作家が、魔法少女ものを書く。企画の段階でこの人選を聞いたファンが身構えたのは、当然でした。
虚淵玄の脚本の凄さは、残酷さそのものではありません。残酷な仕組みを、論理で組み上げているところにあります。
キュゥべえは悪役ではありません。嘘をつかないし、聞かれたことには答える。ただ、聞かれなかったことを言わないだけです。魔法少女になった少女たちが辿る運命も、誰かの悪意ではなく、この世界の仕組みの帰結として提示されます。だからこそ逃げ場がない。悪者を倒せば解決する物語ではなく、仕組みそのものと向き合わされる物語だからです。
ほむらがなぜまどかを止めようとするのか。その理由が明かされる回は、私が今まで観たアニメの中でも、最も痛い30分のひとつでした。ここも詳しくは書きません。ただ、あの回を観た後で第1話を見返すと、ほむらの一挙手一投足が別の意味を持って迫ってきます。
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シャフトの魔女空間は、アニメに侵入した現代美術
この作品を語るとき、脚本と並んで欠かせないのが映像です。新房昭之監督とシャフトの作風は、もともと画面の構図を極端に切り詰めたり、記号を氾濫させたりする癖の強いものでした。『魔法少女まどか☆マギカ』では、その癖が「魔女」の表現に集中投下されています。
魔法少女たちが戦う相手である魔女は、日常の風景の裏側に「結界」と呼ばれる異空間を持っています。この空間のデザインを担当したのが、劇団イヌカレーです。切り絵と写真とコラージュが混ざり合い、色鉛筆で描いたような蝶や、意味の分からない文字が画面を埋め尽くす。可愛らしいキャラクターが、そのどこか手作りの、しかし紛れもなく悪意に満ちた空間を歩いていく。
私はこれを、ホラーの美術だと思っています。血や怪物ではなく、「ここは正気の場所ではない」という感覚だけで観客を追い詰める種類の恐怖です。梶浦由記の音楽と、Kalafinaが歌うエンディングの荘厳さが、その異物感をさらに際立たせます。
12話という短さが、密度に変わる
『魔法少女まどか☆マギカ』の全12話は、深夜アニメとしては標準的な長さですが、物語としては極端に短いものです。無駄な回が一つもありません。日常の回も、戦いの回も、すべてが終盤へ向かう伏線として機能しています。
2011年の放送当時、物語が終盤に差しかかったところで東日本大震災が起き、放送はいったん中断されました。残された話数が後日まとめて放送されるまで、視聴者は結末を知らないまま待つことになったのです。あの時期にこの物語を待った人たちの記憶は、作品の一部として今も語り継がれています。私はリアルタイムで観ていませんでしたが、後にその経緯を知って、最終話の「願い」の重さが少し違って感じられました。
短さは、観る側にとっての優しさでもあります。長期シリーズのように「どこから観ればいいのか」で迷う必要がなく、第1話から最終話まで、一本の映画を観る集中力で走り切れる。私が初めて観たときは、金曜の夜に第1話を再生して、気づけば日曜の朝に最終話を観終えていました。途中で止められなかったのです。
深夜アニメ史における位置づけを一言で言うなら、この作品以降、「魔法少女」という言葉は無邪気には使えなくなった、ということです。ジャンルの約束をひっくり返した作品は他にもありますが、これほど広く、アニメを観ない層まで巻き込んで到達したものは、ほとんど例がありません。
この作品を観るべきなのは、こんな人
まず、アニメをあまり観ない大人です。絵柄で敬遠していた人ほど、第3話以降で受ける衝撃は大きいでしょう。1話25分、全12話で約5時間。長編映画二本分の時間で、ひとつの物語の始まりから終わりまでを完走できます。
次に、ホラーやダークファンタジーが好きな人。ここには派手なスプラッターはありません。代わりに、逃げ場のない仕組みと、正気を疑わせる美術と、少女たちが自分の選択の代償を引き受ける姿があります。その種類の恐怖が好きなら、私は自信を持って薦めます。
そして、新作〈ワルプルギスの廻天〉の話題を聞いて、何のことか分からなかった人。すべての始まりは、この12話です。劇場版[前編][後編]はTVシリーズを再構成したものですから、時間があるなら、まずはTVシリーズの一話ごとの呼吸で観ることを薦めます。
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文:BANGER!!!編集部