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時間も宇宙も戦場も越えて還る『オデュッセイア』を観る前に振り返りたい、クリストファー・ノーランの傑作4選

時間も宇宙も戦場も越えて還る『オデュッセイア』を観る前に振り返りたい、クリストファー・ノーランの傑作4選
『インセプション』©2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

※本記事の情報は2026年9月時点のものです。最新情報はU-NEXT公式サイトにてご確認ください。
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クリストファー・ノーラン監督の最新作『オデュッセイア』(9月11日公開/IMAX先行上映中)は、ホメロスの叙事詩を原作に、トロイア戦争を終えた英雄オデュッセウスの長く危険な帰還を描く、全編がIMAXフィルムカメラで撮影された神話的アクション大作だ。だが振り返ってみると、ノーランはこれまでも形を変えながら“オデュッセイア”を撮り続けてきた。宇宙、夢、逆行する時間、戦場。舞台やルールは違っても、その中心にいるのは、過酷な旅を終えて愛する者のもとへ帰ろうとする人間だ。

『インターステラー』は、ノーラン版『2001年宇宙の旅』と呼ぶにふさわしい一作だ。荒廃していく地球を救うため、元宇宙飛行士のクーパーは幼い娘マーフを残し、人類が生存できる新天地を探す旅へ出る。ブラックホールや相対性理論といった科学的な題材を扱いながら、物語を最後まで動かしているのは父と娘の感情だ。宇宙へ向かう行為は人類を救うための使命であると同時に、故郷から遠ざかっていく残酷な選択でもある。別の惑星で過ごしたわずかな時間が、地球では何十年にも変わる。帰りたいという願いとは無関係に、時間が家族の人生を奪っていく。この圧倒的な距離と喪失感が、クーパーの旅を単なる宇宙探査ではなく、帰還そのものをめぐる叙事詩に変えている。

『オデュッセイア』の英雄が怪物や神々に行く手を阻まれるように、クーパーも人間の理解を超えた宇宙と時間に翻弄される。それでも進み続ける理由は、英雄として名を残すためではない。娘との約束を果たし、もう一度家族のもとへ帰るためだ。壮大な科学と極めて個人的な愛情を同じ画面の中で成立させた、ノーラン作品屈指の感情的な大作となっている。

『インターステラー』© 2025 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

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『TENET テネット』では、“オデュッセイア”の旅が時間の逆行という形に置き換えられる。名もなき主人公は第三次世界大戦を防ぐため、時間を逆向きに進む物質や人間をめぐる作戦へ身を投じていく。一般的な冒険映画が目的地へ向かって前進するものだとすれば、本作は未来へ進みながら過去へ戻るという、矛盾した航海を描いている。初見では情報量の多さと複雑な構成に圧倒される。前向きに進む者と逆行する者が同じ空間で戦い、すでに起きた出来事の原因が後から示されていく。しかし、その難解さ自体が作品の魅力でもある。観客は主人公とともに未知のルールへ放り込まれ、理解できない世界を手探りで進むことになる。

オデュッセウスが知略によって困難を切り抜ける英雄なら、『TENET テネット』の主人公もまた、力ではなく状況を読み解く能力によって世界を救う。さらに一度目には謎だったニールとの関係が、物語を振り返ることで友情と別れの物語へ変わっていく構成も鮮やかだ。感情を前面に押し出さず、時間の迷宮そのものに人間関係を刻み込んだ、ノーランの最も大胆な挑戦作の一つだろう。

『TENET テネット』Tenet © 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

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『インセプション』で描かれるのは、他人の夢の奥深くへ潜っていく精神的なオデッセイだ。主人公コブは標的の潜在意識に考えを植えつける危険な任務に挑むが、その目的は仕事の成功ではなく、離れ離れになった子どもたちのもとへ帰ることにある。夢の中にさらに夢が存在し、それぞれの階層で時間の流れる速さが変わる。複雑な設定を説明するだけなら、これほど鮮烈な映画にはならなかったはずだ。本作を支えているのは、亡き妻モルへの罪悪感から逃れられないコブの内面である。どれほど精密な計画を組み立てても、彼自身の記憶が怪物のように現れ、旅を妨害する。

『オデュッセイア』に登場する怪物や誘惑が英雄の外側に存在する試練だとすれば、『インセプション』の怪物は主人公の心の中にいる。コブが乗り越えなければならないのは敵ではなく、愛した人を手放せない自分自身だ。都市が折れ曲がり、無重力のホテルで戦いが繰り広げられる映像的な驚異の奥に、喪失を受け入れて現実へ帰る男の物語がある。難解な構造と娯楽性、そして切実な感情を高い次元で結びつけた代表作だ。

『インセプション』©2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

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『ダンケルク』は、帰還というテーマを最も直接的かつ肉体的に描いた作品だ。第二次世界大戦中、フランス北部ダンケルクに追い詰められた連合軍兵士たち。その目的は敵を倒すことではなく、海を渡って生きて英国へ戻ることにある。物語は防波堤の「一週間」、民間船が進む海上の「一日」、戦闘機が飛ぶ空の「一時間」という三つの時間軸で進行する。異なる速度で流れていた時間が終盤で一つに重なる構成は、ノーランの技巧が最も研ぎ澄まされた瞬間だ。台詞による説明を抑え、銃声、航空機の轟音、時計の音、呼吸、波の動きによって、観客を戦場のただ中へ閉じ込めていく。

ここに万能の英雄はいない。恐怖から逃れようとする若い兵士、危険を承知で小型船を出す民間人、燃料が尽きるまで援護を続ける操縦士。それぞれの小さな決断が積み重なり、一つの巨大な帰還を実現させる。オデュッセウス一人の長い航海とは対照的に、『ダンケルク』が描くのは名もなき人々による集団のオデッセイだ。

『ダンケルク』©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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宇宙の果てから娘のもとへ帰ろうとする『インターステラー』、時間を逆行して破滅を防ぐ『TENET テネット』、夢の迷宮を抜けて子どもたちとの再会を目指す『インセプション』、海峡を越えて祖国へ戻ろうとする『ダンケルク』。ノーランの主人公たちは、常に世界のルールが崩れる場所へ送り込まれてきた。そこで問われるのは、どこまで遠くへ行けるかではない。どれほど時間が流れ、道に迷い、何かを失っても、人は帰るべき場所を見失わずにいられるのか。その問いを神話の原点へ立ち返って描いた作品が『オデュッセイア』であり、これら4本はそこへ至るまでにノーランが重ねてきた、異なる時代と世界をめぐる壮大な航海でもある。

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