7月20日は「ヒトラー暗殺未遂事件」の日…“戦争に虐げられた女性たち”描く『ヒトラーの毒見役』の歴史的背景
食べて死ぬか、撃たれて死ぬか――戦争に虐げられた女性たちの知られざる真実を描く『ヒトラーの毒見役』が、7月31日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開となる。
実話に基づく世界的ベストセラー小説を映画化した本作の公開に先立ち、ここでは本作で描かれる歴史的事件、そして戦争に翻弄される女性たちの“背景”について深堀りしてみよう。
『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
『ヒトラーの毒見役』が描く、驚くべき史実
1943年の第二次世界大戦末期。ベルリンの爆撃を逃れ、田舎町の義両親の家で戦地にいる夫の帰りを待つローザ。その場所は“狼の巣”と呼ばれる、ヒトラーが総統大本営<ヴォルフスシャンツェ>を置いていた森の近くだった。
ある日、彼女はヒトラーの毒見役に命じられ、親衛隊による監視のもと銃を突き付けられながら毒見をすることに。ヒトラーが食す最高の料理を、死と隣り合わせの最悪な状況で口にする苦悩の日々。
そして1944年7月、ヒトラーの暗殺を狙うクーデターが勃発。戦局が混迷を極める中、彼女たちの運命は――。
『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
2012年、「私はヒトラーの毒見役を務めていた」と話す95歳のドイツ人女性が現れた。彼女はヒトラーの協力者とみなされることを恐れ、長いあいだ自分の過去を誰にも語らずにいたが、晩年になって告白したというのだ。戦後67年を経て明らかになった真実……本作はこの証言に基づく、ナチスに翻弄された名もなき女性の物語である。
『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
ヒトラーの秘密の隠れ家<狼の巣>
本作の主人公ローザらが毒見役として連れて行かれた場所は、“狼の巣”と呼ばれるヒトラーの総統大本営<ヴォルフスシャンツェ>。1941年6月から1944年11月まで設置され、独ソ戦においてヒトラーが最も長く滞在していた軍事司令部である。
『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
“狼”はヒトラーが呼んでいた自身の通称で、狼の巣はその名の通りヒトラーの秘密の隠れ家であった。現在のポーランド北東部(旧東プロイセン)に位置し、ベルリンやソ連の国境からも列車でアクセスしやすい好立地。湖や沼地に囲まれた美しい田園地帯を通りすぎると、森の奥深くに分厚いコンクリートからなる複数の廃墟がひっそりと姿を現す。
人里離れたこの広大な敷地には、兵舎やシェルターのほか娯楽施設まで揃っていたという。ナチスの遺跡は多くが破壊されてしまったが、ヴォルフスシャンツェは現存する数少ない遺跡のひとつであり、現在は年間約30万人が訪れる人気な観光地となっている。本作ではここを舞台に、恐怖に怯える毒見役の日々が描かれる。
※現在のヴォルフスシャンツェ 『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
ヒトラーの暗殺を狙った“7月20日事件”とは?
そんなヴォルフスシャンツェで、ある事件が起こる。ヒトラー暗殺、およびクーデター未遂事件だ。首謀者で実行犯はドイツ国防軍のクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐。ヒトラーの独裁的な軍事政策に不満を抱き、彼を中心とした反ヒトラーのグループが暗殺を企てたのだ。
『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
1944年7月20日、シュタウフェンベルクはヴォルフスシャンツェの地下室で行われた作戦会議中に、机の下に爆弾が入った鞄を設置。この大爆発によって同席していた軍人が数名死傷したものの、ヒトラーは軽症を負ったのみで無事であった。
シュタウフェンベルクはすぐに逮捕され、処刑。ヒトラーは翌日にラジオで演説し、事件の経緯と自身の無事を報告した。本作中でも毒見の傍らこの事件が勃発した様子が描かれるが、ヒトラーのラジオ演説が流れるシーンでは実際の音声が使用されており、ヒトラーの生々しい肉声がその実態を伺わせる。
『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
トム・クルーズ主演作『ワルキューレ』で描かれた事件の全貌
7月20日事件とヴォルフスシャンツェの名を世界に広めたのが、トム・クルーズ主演の映画『ワルキューレ』(2008年)。トムクル演じるシュタウフェンベルクを通して、事件の全貌を描いた歴史サスペンスドラマだ。
タイトルのワルキューレとは、「ワルキューレ作戦」のコードネーム。国を愛するがゆえにヒトラーの悪行に絶望していたシュタウフェンベルクが、自宅でワーグナーの「ワルキューレの騎行」を耳にして思いついた計画なのだ。ドイツ国防軍の部隊の一つである国内予備軍を用いて、ヒトラー暗殺後に政権及び国内を掌握する――という壮大な目論見を実話に基づき、スリリングに描いている。
この『ワルキューレ』によって、ドイツ国内にもナチスの蛮行を終わらせるために立ち上がった人物がいたという事実が世界的に知られるようになった。監督は『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)のブライアン・シンガー。
女性の視点から見つめるナチスの暴虐
本作は、このような歴史的な出来事を背景にしながら、女性を主人公に据えている。ナチスに関する映画はこれまで数え切れないほど作られてきたが、その多くは男性の物語だった。男性主体のナチズムに虐げられたドイツ人女性はたくさんいたにも関わらず、歴史の陰に隠れてあまり語られてこなかったのだ。
『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
舞台は戦場ではなく、戦時下を生き抜く女性の日常。ナチスの暴虐によって暮らしを奪われた女性の視点を通して、その理不尽な脅威がリアルに描かれている。
『ヒトラーの毒見役』は7月31日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
『ヒトラーの毒見役』
1943年、第二次世界大戦末期。
ベルリンの爆撃を逃れ、ポーランドの田舎町で戦地にいる夫の帰りを待つローザ。その場所は“狼の巣”と呼ばれる、ヒトラーの総統大本営「ヴォルフスシャンツェ」がある森の近くだった。
ある日、彼女はヒトラーの毒見役に命じられ、他の若い女性たちとともに、親衛隊から銃を突き付けられながら食事をすることに。
ヒトラーが食す最高の料理を、死と隣合わせの最悪な状況で口にする苦悩の日々。
そして1944年7月、総統大本営でヒトラー暗殺を狙うクーデター(7月20日事件)が勃発。
戦局が混迷を極める中、彼女たちの運命は──。
出演:エリーザ・シュロット、マックス・リーメルト
アルマ・ハスーン、エマ・ファルク、オルガ・フォン・ラックヴァルト、テア・ラッシェ、ベリット・ヴァンダー、クリームヒルト・ハーマン
原作:ロッセラ・ポストリノ 「ヒトラーの毒見役」
監督: シルヴィオ・ソルディーニ
脚本:ドリアーナ・レオンデフ、シルヴィオ・ソルディーニ、ルチオ・リッカ、クリスチナ・コメンチーニ、ジュリア・カレンダ、イラリア・マッキア
| 制作年: | 2025 |
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2026年7月31日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開