毎年6月の第3日曜日は「父の日」。いつもは照れくさくてなかなか言えない「ありがとう」の気持ちを、映画を通して見つめ直してみませんか?
映画の中で描かれる父親たちは、決して完璧なヒーローばかりではありません。大ボラ吹きだったり、厳格すぎたり、時には脆くて不器用だったり。しかし、彼らが子どもに向ける眼差しには、言葉にならないほどの深い愛が溢れています。今回は1980年代から2020年代まで、各年代を代表する「父親の姿」が心に刻まれる5つの作品を選んでみました。
思い出すのは大きな背中
1980年代:映画史に残る、最強にチャーミングな親子バディ】
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ハリソン・フォード、ショーン・コネリー、デンホルム・エリオット ほか
【あらすじ】
考古学者にして冒険家のインディ・ジョーンズのもとに、キリストの「聖杯」を捜索していた高名な学者である父親・ヘンリーが行方不明になったという報せが届きます。父を救い出すため、ナチスの執拗な追跡をかわしながらベニスへと飛ぶインディ。しかし、ようやく再会した父は、息子の心配をよそに超マイペースで、自分の研究にしか興味がない筋金入りの変人で……。
【おすすめポイント】
シリーズ第3作にして、「最高の親子映画」としても名高い冒険活劇。名優ショーン・コネリー演じるヘンリー博士の、飄々としつつもどこか憎めないキャラクターがとにかく魅力的です。どんなにピンチになっても「父親としての説教」を忘れないヘンリーと、子どもの顔に戻ってしまうインディの掛け合いはユーモアたっぷり。不器用だけど、どこかでお互いをリスペクトし合っている大人の親子関係に、クスッと笑えて最後は温かい気持ちになれる一作です。
1990年代:絶望の淵で、息子に捧げた「世界一優しい嘘」
『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998年)
監督:ロベルト・ベニーニ
出演:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジオ・カンタリーニ ほか
【あらすじ】
1939年、ファシズム下のイタリア。ユダヤ系の陽気な男グイドは、美しい小学校教師のドーラと恋に落ち、熱烈なアプローチの末に結婚。可愛い息子も生まれ、幸せに暮らしていました。しかし、第二次世界大戦が激化する中、突然彼らにナチスの強制収容所への収監命令が下ります。過酷な現実から幼い息子の心を守るため、父親のグイドは命懸けの嘘をつき……。
【おすすめポイント】
カンヌ国際映画祭審査員グランプリをはじめ、世界中で涙と絶賛を浴びた父親愛の傑作。「どんな絶望の中にあっても、ユーモアは光を失わない」ということを、父親の圧倒的な愛を通して描いています。息子を怯えさせないために、収容所の中でもおどけ続けるグイドの背中は、痛烈で、そして世界一頼もしい。父親がくれた「優しい嘘」の真意を知ったとき、誰もが涙を止められなくなる不朽の名作です。
2000年代:不器用な父の大ボラ話に隠された、マジカルな真実
『ビッグ・フィッシュ』(2003年)
監督:ティム・バートン
出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クラダップ ほか
【あらすじ】
ジャーナリストのウィルは、自分の人生をファンタジックな「おとぎ話」として語る父親のエドワードと不和を抱えていました。魔女、巨人、誰も知らない不思議な町……そんなホラ話ばかりで、本当の姿を明かそうとしない父に愛想を尽かし、二人は3年間も絶交状態に。しかしある日、父が末期癌で余命幾ばくもないという報せが届きます。実家に戻ったウィルは、残された僅かな時間の中で、父が語り続けた「お話」の真実を突き止めようとしますが……。
【おすすめポイント】
鬼才ティム・バートン監督が、映像の魔術を尽くして描く感動のファンタジードラマ。なぜ父親は、自分の人生を嘘で塗り固めなければならなかったのか? 息子がその「嘘」の裏にある本心に気づき、父の人生を受け入れるラストは、映画史に残る美しさです。「平凡な毎日を、愛する家族のために最高に輝くおとぎ話に変えた」。そんな、お父さんなりの愛情表現に胸が熱くなる、すべての息子たちに捧げたい一本です。
2010年代:「血の繋がり」か「過ごした時間」か。父親たちの葛藤
『そして父になる』(2013年)
監督:是枝裕和
出演:福山雅治、尾野真千子、真木よう子 ほか
【あらすじ】
都心の高級マンションで暮らすエリートサラリーマンの野々宮良多。従順な妻と、6歳になる大人しい息子・慶多に恵まれ、自身の人生を「勝ち組」だと信じて疑いませんでした。しかしある日、慶多が生まれた病院から、出生時に別の赤ん坊と取り違えられていたという衝撃の事実を告げられます。実の息子が育てられていたのは、群馬の寂れた電器店を営む、がさつで賑やかな斎木家。対照的な二つの家族は、「血」を選ぶのか「時間」を選ぶのか……。
【おすすめポイント】
是枝裕和監督がカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、日本中に深い問いを投げかけた社会派ドラマ。福山雅治演じる冷徹なエリートパパと、リリー・フランキー演じる子煩悩なダメ親父という、正反対の父親像が痛烈に響きます。「男は、子どもが生まれただけでは父親にはなれない。時間をかけて“父親になっていく”のだ」というメッセージが、静かですが重く心に刺さります。観終わったあと、我が子の寝顔を愛おしく抱きしめたくなるような、日本映画の金字塔です。
2020年代:大人になった今だから分かる、あの夏の父の背中
『aftersun/アフターサン』(2022年)
監督:シャーロット・ウェルズ
出演:ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン=ホール ほか
【あらすじ】
母と離婚し、普段は離れて暮らしている20代の若い父親・カラムと、11歳の多感な少女ソフィ。二人は夏休みを利用して、トルコの鄙びたリゾート地へバカンスに出かけます。ビデオカメラを回し、お互いの絆を確かめ合うように親密で楽しい時間を過ごす二人。しかし、明るく頼もしく振る舞うカラムの横顔には、時折、娘には決して見せない深い孤独の影が落ちていました。20年後、父と同じ年齢になったソフィは、あの夏の父の記憶を辿り始め……。
【おすすめポイント】
新鋭シャーロット・ウェルズ監督の長編デビュー作にして、世界中の映画賞を席巻したインディーズ映画の傑作。ポール・メスカルが演じる、危ういほど繊細で優しい父親の姿が圧倒的な余韻を残します。子どもの頃には気づけなかった、「父親である前に、一人の人間として苦しんでいた」という父の哀愁と痛み。大人になった今だからこそ、その背中に愛しさと切なさが込み上げる、2020年代を代表する珠玉のドラマです。
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ユーモアで引っ張る父親、命懸けで子どもを笑わせる父親、ファンタジーで包み込む父親、葛藤しながら成長する父親、そして、孤独を抱えながら優しさをくれた父親。
時代が変わっても、父親たちが子どもを想う不器用な愛の形は変わりません。今年の父の日は、ぜひこれらのお父さんたちの物語に触れて、あなたのすぐ近くにある(あるいは、記憶の中にある)温かい絆に思いを馳せてみてください。
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ハリソン・フォード、ショーン・コネリー、デンホルム・エリオット ほか
『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998年)
監督:ロベルト・ベニーニ
出演:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジオ・カンタリーニ ほか
『aftersun/アフターサン』(2022年)
監督:シャーロット・ウェルズ
出演:ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン=ホール ほか