【ハリウッドの闇】俳優が「1日分のギャラで一生使い倒される」恐怖の“AI契約”、その実態とは

【ハリウッドの闇】俳優が「1日分のギャラで一生使い倒される」恐怖の“AI契約”、その実態とは
※イメージ画像

「1日分のギャラで、あなたの容姿と声を“永遠に”利用させてもらう」――まるでSF映画で描かれるディストピア世界のような話がハリウッドの制作現場で現実視され、大きな議論を呼んでいる。

「1日の支払いで、永遠に所有できる」

米テックメディア<The Verge>や大手映画業界紙が報じたところによれば、映画スタジオ側が俳優に対し、AI技術を用いた「デジタル・レプリカ(分身)」の作成と、その無期限の利用権を求める契約を提示。これが世界中に大きな波紋を広げている。

この問題が表面化したきっかけは、2023年に起こった全米俳優組合(SAG-AFTRA)によるストライキだった。交渉の過程で、スタジオ側を代表する団体(AMPTP)が提示した「(※組合側の主張によれば)あまりに一方的な」条件が、組合側によって暴露されたのだ。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Getty Images(@gettyimages)がシェアした投稿

その内容は「エキストラなどの俳優をスキャンし、1日分の出演料を支払う代わりに、スタジオがそのスキャンデータを所有。以降、本人の同意や追加報酬なしで、あらゆるプロジェクトに永久に使用できる」というものだった。スタジオ側は「利用はその作品内に限るものだ」と反論したが、契約書の文言の曖昧さが決定的な不信感を生んだ。

この条件に対し、組合の交渉責任者は「彼らの画像、肖像を、本人の同意も報酬もなく、永遠に使い続けることができるようにするという提案だ」と激しく非難。なかでも特に深刻なのが、キャリアの浅い若手俳優やエキストラへの影響だった。

「権利の剥奪」と「NO FAKES法案」

大手映画メディアの分析によれば、スタジオ側にとってAI俳優は、撮影の効率化やコスト削減において極めて魅力的なツールとなるだろう。しかし同時に、無名に近い俳優たちが目先の数万円のギャラと引き換えに、「将来、自分のデジタル・クローンが主役を張っても1円も入らない」という契約にサインさせられるリスクが指摘されている。

これは実質的に、俳優の将来的な価値をあらかじめ安値で買い叩く行為に他ならない。この事態を受け、米国では俳優の肖像権をAIから守るための法整備が急ピッチで進んでいる。

最新の時事ニュース(CBS News等)によれば、2025年1月よりカリフォルニア州などで<デジタル・レプリカ>の作成に際し、俳優側の明示的な同意と適正な代理人(組合や弁護士)の同席を義務付ける新法(AB 2602等)が施行された。

また、米連邦議会でも、本人の許可なくAIで生成された肖像や音声を利用することを禁じる<NO FAKES Act(NO FAKES法案)>という超党派の法案が議論されており、州単位から連邦単位での一括した保護へと動きが加速している。

“映像の未来”と、守られるべき「人間性」

“映画から人間が消える”という恐怖は、もはや単なる絵空事ではない。スタジオ側は「デジタル技術は表現の幅を広げるものだ」と主張するが、職を奪われることを危惧する俳優たちの反発は凄まじい。英Guardianが報じたところでは、英国の俳優組合(Equity)も「AIによって、我々のメンバーのプログラムや映画が許可なく学習されている」として、大規模な反対運動を示唆している。

クオリティの高い映像を楽しむ一方で、その裏側で俳優たちの“存在そのもの”が権利として搾取されてはいないか? ハリウッドおよび世界の映画界でいま起きているこの闘いは、映像ビジネスにおける倫理観を根本から問い直す、歴史的な分岐点となっている。

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook