世界が震撼した「ルーシー・レトビー事件」
英国で“史上最悪の医療犯罪”と騒がれた「ルーシー・レトビー事件」を記憶している方は多いだろう。静かな地方病院で起きた不可解な新生児急変から始まったこの事件は、複数人の赤ちゃんが死亡するという最悪の結果を招くこととなった。そんな“凶悪”事件が今、ふたたび揺れている。
――2026年、この事件を再検証するNetflixのドキュメンタリー映画が配信されると、事件の“見え方”が一変した。作中、専門家が「医療証拠の解釈に重大な問題がある」と指摘したことで、視聴者の間でも「本当に彼女は犯人なのか?」という疑問が急速に拡散。配信直後からSNSでは議論が沸騰し、英国メディアも連日この問題を取り上げる事態に発展しているのだ。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
「史上最悪の医療犯罪」はなぜ起こったか?
2015~2016年、チェスター病院の新生児病棟で原因不明の死亡が相次ぎ、当初は「不運な偶然」と片付けられていた。しかし、急変の多くに“同じ看護師”が立ち会っていた事実が浮かび上がり、病院内外で疑念が膨らんでいく。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
急変が集中した期間には、通常では考えにくい頻度で心肺停止や重篤化が連続して発生。検察側・病院側の分析として、看護師のルーシー・レトビーが勤務していた時間帯に事例が偏っていたことが主張され、内部調査を進めるきっかけとなった。また、彼女の自宅からは「I am evil, I did this(私は悪だ、私がやった)」と読めるメモが見つかり、検察側はこれを“心理的自白”に近い証拠として扱った。
2018年にレトビーが逮捕されると、2023年の裁判で7人の新生児殺害と7件の殺人未遂で有罪に。英国では前例が多くない“仮釈放なし、事実上の終身刑”を言い渡された彼女に対し、英国メディアは“ベイビーポイズナー”と呼び、その凶行に世界が震撼した。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
Netflixドキュメンタリーをきっかけに疑惑が再燃
しかし、今年に入ってNetflixのドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』が配信されると、この事件の様々な“疑惑”が再燃する。……ちなみに、作中で遺族の映像に(プライバシー保護のため)AIを使用したことによる“不気味の谷”現象が発生していることについての議論もあるが、それについてはひとまず触れないでおこう。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
まず、この作品では裁判で有罪認定の根拠となった“医療データの解釈”に専門家が異議を唱え、特に「空気塞栓(エアエンボリズム)」とされた死因の医学的妥当性が再検証の対象になっている。複数の新生児科医が「検察側の説明は科学的に不十分」と指摘するなど、これまで表に出ていなかった医療現場の証言は非常に重要だ。
さらに裁判では十分に扱われなかった、人員配置や病棟運営、記録体制など“病院の構造的な問題”も指摘されている。これらの問題が「急変の多発を招いた可能性」を示す声も出ており、事件の背景に“組織的な失策”があったのではないかという議論が広がっている。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
有罪か冤罪か? 揺れる世論と複雑な捜査状況
英政府が進める公的調査では、病院がレトビーに疑いを向ける過程で、他の要因を十分に検証しなかった可能性も焦点となっている。調査委員会は「(病院幹部が)問題の責任を個人に押し付けたのではないか?」という疑念についても調べており、関係者の証言が続々と提出されているという。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
また、警察の捜査手法も批判の矛先になっている。レトビー退職後も同病棟で急変が発生していたにもかかわらず、警察がその事例を十分に調査しなかったとされる内部メールが報じられ(※信憑性にやや難あり)、捜査の公平性に疑問が生じているのだ。さらに、警察が“レトビー単独犯”の前提で証拠を組み立てた可能性も指摘され、再審請求の動きも進んでいる。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
現在、レトビーは収監されたままだが、事件は「個人の凶行」という構図から、医療体制・捜査手法・司法判断のすべてを問い直す大規模な再検証へと発展していると言えるだろう。
Netflixドキュメンタリー『犯罪捜査ファイル ルーシー・レトビー新生児殺害事件』独占配信中