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シアーシャ・ローナン、自身の“アルコール依存症”の過去を語る「依存症は人生に痛みや悲しみをもたらした」

シアーシャ・ローナン、自身の“アルコール依存症”の過去を語る「依存症は人生に痛みや悲しみをもたらした」
『おくびょう鳥が歌うほうへ』© 2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

大都会の夜の喧騒に飲み込まれた生物学者が、故郷で新たな生き方を模索する再生の道程を描いた、ノラ・フィングシャイト監督の長編映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』が、2026年1月9日(金)より公開される。このたび、インタビュー映像「シアーシャ・ローナン×パーパ・エッシードゥ~アルコール依存症を語る~」が解禁となった。また、著名人コメントが到着した。

いくつもの色で、私は私になっていく

若手実力派俳優シアーシャ・ローナン、そしてベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた『システム・クラッシャー』のノラ・フィングシャイト監督が初のタッグを組み映像化した本作。原作は、イギリスで2016年に出版されるや否や多くの読者の共感を呼び、瞬く間に一大ベストセラーとなったエイミー・リプトロットによるノンフィクション回想録「THE OUTRUN」。スコットランド・オークニー諸島の厳しくも美しい自然を舞台に、著者自身の「再生の旅」を描いた本作は、PEN/アッカリー賞やウェインライト賞など複数の文学賞を受賞し、各紙誌の年間ベストブックにも選出されるなど高い評価を受けている。

主人公のロナはロンドンでの学生生活を経て、自由と刺激を求めて大都会の夜の世界へと傾倒。やがてその自由は制御を失い、アルコールへの依存に変わり、人間関係を壊し、心身をも蝕む日々を過ごすように…。恋人との別離、暴力的な体験、入院など、人生が限界を迎えた末に、彼女は依存症の治療施設に入所し、90日間のリハビリプログラムを経て断酒生活を開始。そんな彼女が向かったのは、かつて自身が育ったスコットランド北部のオークニー諸島。野鳥保護団体に勤務し、朝晩の決まった時間にフィールドワークへ出て、稀少種であるウズラクイナの鳴き声を聴き取るという地道な作業に従事することに。誰とも会話を交わさない孤独な時間の中で、彼女は少しずつ自らの内面と対話を重ね、自然と向き合いながら静かな再出発を図るのだが…。

「この病気を別の角度から探求したいと思った」

インタビュー映像では、シアーシャ・ローナンとパーパ・エッシードゥがアルコール依存症について語る。配偶者の俳優ジャック・ロウデンと共に初プロデュースを手掛けたシアーシャだが、本作のロナを演じたいと思ったきっかけを「私自身も依存症に苦しんだから。私の場合もアルコールだった」と告白。自身の経験にも照らし合わせ「依存症は人生に痛みや悲しみをもたらした。この病気を別の角度から探求したいと思った」と、制作の経緯を語った。依存症患者を演じるということについても、「個人のあらゆる面を探求することができたのは役者冥利に尽きる」と制作面と演技面、両軸での自身の新しい挑戦に大満足のようだ。

アルコール依存症は「当事者の内面に注目しがちだけど、実際は恋人や友人、家族との関係にも影響する。外に広がる問題だ」と指摘するのは、主人公ロナの恋人役デイニンを演じたパーパ・エッシードゥ。英国では演劇界を代表する俳優として有名で、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでは黒人として初の主人公ハムレット役を務め、演劇界で数々の賞を受賞している。日本では、A24の『MEN 同じ顔の男たち』(22年/アレックス・ガーランド監督)への出演で注目を集め、現在制作中のHBOのドラマ版「ハリー・ポッター」ではセブルス・スネイプ役に起用されたことも大きな話題のひとつだ。

演技についても特に分析的に読み解くことを大事にするパーパは「深刻な関係を体験した友人や、回復期の人たちと話した」と、ノラ監督や他の俳優陣と同様、現場でのリサーチを重ねたと語る。その多くは「関係を断つのではなく関係を保つための努力」を語る姿だったようだ。劇中のデイニンも、彼の言うところの「ただ絶望して去るのではなく、関係を守ろうともがく姿」に、多くの観客は胸を引き裂かれる想いになる。シアーシャも昔からパーパの大ファンだったと明かし、最初の読み合わせの段階から「すぐに化学反応を感じた」という。「特に即興が多い作品だし相性の良し悪しが画面に表れやすい」。その上で彼が適役であったことを、プロデューサーとしても、そして一演者としても感じ取ったようだ。

今年4月、<女性の定義を生物学的な根拠によるものに限定する>としたイギリスでの最高裁の判決へ反対する公開書簡が発表された。このLGBTQ+コミュニティへの連帯を表明した書簡にも名を連ねるパーパ・エッシードゥは「関係性を一定の形に当てはめたり、失敗した関係だとか決めつけないことが大事」と穏やかに伝える。「互いを必要とする恋人たち、批判的だったり距離のある関係ではなく、深く親密な関係を(本作で)表現しようとしたんだ」と、二人の間の距離感を体現することに腐心したと語った。

『おくびょう鳥が歌うほうへ』© 2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

<コメント>

金子由里奈(映画監督)
映画を観たあと窓を開けると、近所の木から知らない鳥が飛び立った。いろんな音が耳に入ってくる。生き物の気配、街のざわめき、渡り鳥の記憶。地球の音は、いつもひとりを寿いでいることに気づかせてくれる映画だった。

山崎まどか(コラムニスト)
シアーシャ・ローナンの演じるヒロインはいつも翼を持っている。打ちのめされても地上に安住するのではなく、もう一度飛び立つために再生を求めて厳しい環境で身を清め、鳥の声に希望を探す。それが翼を持つものの定めなのだ。

信田さよ子(公認心理師・臨床心理士)
女性とアルコール依存症、そして回復。ともすれば残酷で悲惨さだけが強調されがちなテーマだが、本作は違う。お酒をやめ続けることがどれほど困難かをリアルに描きながら、それでも画面から伝わってくるのはすがすがしいまでの美しさと深い感動である。

杉野希妃(俳優・監督・プロデューサー)
シアーシャ・ローナンは、ここで演じるのではない。未完成の生が、恐ろしいほど生々しくそこにあった。彼女はやがて自然の息づきとなり、風を呼び、海を震わせ、風景の奥底に沈んでいたリズムを呼び覚ます。その融和の先に置かれた、物語終盤のささやかな贈り物が、静かに心を揺さぶる。

『おくびょう鳥が歌うほうへ』© 2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

『おくびょう鳥が歌うほうへ』は2026年1月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

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