全米に衝撃を与えた“ニューオーリンズ脱獄事件”は最後の逃亡者、デリック・グローヴスが逮捕されたことで終結を迎えた。グローヴスは10月8日、アトランタ市内の住宅で拘束されたという。
「簡単すぎるぜ!」あまりにも大胆な集団脱獄
今年5月16日未明、ルイジアナ州ニューオーリンズの<オーリンズ・ジャスティス・センター>から10人の受刑者が脱走。彼らはトイレの背後にある穴を通じて施設外へ抜け出し、翌朝の点呼まで不在に気づかれなかった。空けられた穴の上には「To Easy LoL/簡単すぎるぜ(爆笑)」という落書きがあったという……。
11 New Orleans inmates ESCAPED jail by breaking a hole behind a toilet…
They left messages mocking jail officials.
“Too easy LOL” pic.twitter.com/7Z6iPLJOAK
— DramaAlert (@DramaAlert) May 16, 2025
この大胆な脱獄に対し地元当局と連邦機関はすぐさま大規模な捜索を行い、囚人の多くが早い段階で身柄を確保されたが、最後まで逃亡を続けていたのが28歳のデリック・グローヴスだった。彼は2018年のマルディグラ(祝祭)当日に発生した銃撃事件で第二級殺人2件による仮釈放なしの終身刑が確定。さらに別件の過失致死罪2件でも有罪を認めていた。
脱獄から約5ヶ月が経過した10月8日朝、犯罪情報提供団体Crimestoppersへの通報を受け、米国保安官局ニューオーリンズ特別捜査班はアトランタ南西部の住宅を特定。アトランタ警察のSWAT部隊が突入し、複数のガス弾を使用して屋内を制圧。グローヴスは地下室のクロールスペースに潜んでいたが、警察犬によって発見され拘束された。
囚人の恋人や刑務所職員も逃亡を幇助していた!?
オーリンズ郡地方検事ジェイソン・ウィリアムズは、彼の逃亡を支援した可能性のある人物についても捜査を継続するとコメント。すでにグローヴスの交際相手とされるダリアナ・バートンは、グローヴスと外部の人物との通信を仲介し、脱獄に関する情報を伝達していたとして6月に逮捕された。他にも十数名が逃亡支援の容疑で逮捕されており、中でも刑務所のメンテナンス職員はトイレの水を止めることで脱獄を可能にしたとされている。
なお5月の脱獄直後、24時間以内に3人の受刑者がニューオーリンズ市内で拘束され、他の者もバトンルージュやテキサス州などで順次逮捕された。9人目の逃亡者アントワン・マッシーは6月下旬に市内で確保。彼は逃亡中にラッパーやドナルド・トランプ大統領に助けを求めるような動画を投稿していたことが確認されている。
グローヴスは逮捕後、報道カメラに対してキスするような素振りを見せるなど反省した様子はなかった。州司法長官は、彼の脱獄への関与についても法の最大限の適用をもって起訴する方針を示している。いずれにしてもこの事件は、刑務所の管理体制に対する深刻な疑問を投げかけるものであり、今後の制度改革と責任追及が注目される。