米ニューヨーク出身の音楽プロデューサー、ラッパー、企業経営者のパフ・ダディことショーン・“ディディ”・コムズが起こした大事件は、1年以上が経過した現在も米エンタメ業界を騒がせ続けている。
性的暴行と性売買の告発:一部で有罪、陪審との膠着も?
2023~2024年から連邦レベルでの性的人身売買や売春斡旋など、複数の刑事告発を受けていたディディが新たな民事訴訟で性的暴行を告発されたのは、2025年5月のこと。原告女性はディディに薬物を盛られたうえでレイプされたと主張し、その詳細が衝撃的な形で報じられた。
同年7月、ニューヨークで行われた8週間の連邦裁判で、ディディは最も重い罪(人身売買と組織的犯罪)については無罪となったが、売春目的の州間移動に関する2件で有罪判決を受ける。
陪審は一部の罪状で意見が割れており、ある法的専門家はディディ側が“ハイステークス・ポーカー(賭け金の大きいイチかバチかの大勝負)”のような法廷戦術を取ったと分析。元従業員の証言も注目されたが、元シェフは「報復が怖い」と語り、判決後の安全を懸念している。
トランプ大統領に恩赦を要請? 一部弁護士は否定
同年8月には、ディディの弁護士がトランプ大統領に対して恩赦を求めて接触したという報道も。トランプは過去のインタビューで「彼(ディディ)について話はあった」と認めつつ、「彼は私に対して非常に敵対的だった」と述べており、恩赦には否定的な姿勢を示していたという。
一方で、ディディの弁護団内部では情報が錯綜しており、その数日後には別の弁護士から「私はトランプ大統領とは話していない」と否定する発言が。しかし、トランプ政権内ではディディへの恩赦が「真剣に検討されている」との情報もあり、状況は流動的だ。
収監回避の試みと大々的な復帰計画
ディディへの量刑言い渡しは今年10月3日に予定されており、最大20年の懲役が科される可能性があるとのこと。ディディは刑務所収監を避けるためマイアミの豪邸での自宅拘禁を求める意向を示しているようだが、同時にマディソン・スクエア・ガーデンでのキャリア再起を計画しているという弁護士のコメントもあり、誰が見ても超ギリギリの崖っぷちにいながらも復帰を模索しているのは図々しい…もとい、さすが大物実業家と言えるかもしれない。
90年代を代表する偉大なラッパー、ノトーリアス・B.I.G.と2Pacが命を落とした“東西抗争”にも深く関わっていたのでは? という都市伝説などなど、ヒップホップ界きってのトラブルメーカーとして知られるディディ。ストリートで真の意味でのプロップスを得る代わりに天才的な先見の明と札束の力で道を切り拓いてきた彼にも、ついに年貢の納めどきが近づいているのだろうか。