2025年9月26日(金)から、阿部寛主演の『俺ではない炎上』が劇場公開されます。浅倉秋成の同名小説を映画化した本作は、ネット上で身に覚えのない事件の犯人だと名指しされた主人公の恐怖を描き、SNS上で根拠の乏しい情報が“真実”となっていく現代社会の闇を浮き彫りにします。
インターネットとSNSが生活に欠かせないものとなった現代、その便利さの裏側には様々な危険が潜んでいます。個人情報の漏洩、サイバーいじめ、フェイクニュースの拡散、そして匿名性を悪用した誹謗中傷……、これらの問題は誰にでも起こりうる身近な脅威となっています。そこで今回は、現代のデジタル社会に潜む様々な危険性を鋭く描いた5作品を紹介します。
いつ遭遇してもおかしくない身近な脅威
『アンフレンデッド』(2015年)
監督:レヴァン・ガブリアーゼ
出演:シェリー・ヘニッグ、モーゼス・ストーム、レニー・オルステッド ほか
【あらすじ】
高校生のブレアは、友人たちとスカイプでビデオチャットを楽しんでいた。しかし、突然謎のアカウントがチャットに参加してくる。最初は乱入者を無視していたが、そこに1年前に自殺した同級生ローラのアカウントからメッセージが届き……。
【おすすめポイント】
全編がパソコンの画面上で展開される演出も話題となったサイバーホラー。Skype、Facebook、YouTubeといった実際のSNSプラットフォームを使用し、まるで自分もそのチャットに参加しているかのような臨場感を演出しています。匿名性に隠れて行われる陰湿なサイバーいじめがどれほど深刻な結果を招くかを生々しく表現し、現代のネット社会における人間関係の脆さと、デジタル上の行動が現実世界に与える影響の大きさを認識させる作品です。
『search/サーチ』(2018年)
監督:アニーシュ・チャガンティ
出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー ほか
【あらすじ】
父親と2人暮らしの16歳の女子高校生マーゴットが突然行方不明に。父親デビッドは、警察の捜査と並行して、娘のSNSアカウントやデジタル機器を調べ始める。しかし、調べれば調べるほど、それまで全く知らなかった娘の一面を目の当たりにすることになり……。
【おすすめポイント】
本作も全編がパソコンやスマートフォンの画面で構成される、「スクリーンライフ」映画として制作されたサスペンス・スリラー。SNSの投稿、検索履歴、メッセージのやり取りなどから人物像を探る過程がリアルに表現され、「デジタル・ネイティブ世代」と「デジタル・イミグラント世代」の溝を巧妙に描いています。ネット上の情報の信憑性や、プライバシーの境界線といった現代社会の問題も織り込まれています。
『SNS-少女たちの10日間-』(2020年)
監督:バルボラ・ハルポヴァー ほか
出演:テレザ・チェジュカー、アネジュカ・ピタルトヴァー、サビナ・ドロウハー ほか
【あらすじ】
幼い顔立ちをした18歳以上の女優3人を12歳の少女に扮装させ、SNS上で偽のアカウントを作成。10日間にわたって実際にネット上で活動し、未成年者がどのような危険にさらされているかを記録したドキュメンタリー。わずか10日間で2,458人の男性からコンタクトがあり、その中には明らかに性的な意図を持った大人たちが含まれていた。
【おすすめポイント】
実際の社会実験を映像化したドキュメンタリー映画として、ネット上の児童性的虐待の実態を生々しく暴いた衝撃作。インターネット上で子どもたちがどれほど危険にさらされているかを具体的な数字と実例で示しており、保護者や教育関係者にとって重要な警告となる内容といえます。チェコで制作された作品ですが、描かれている問題は世界共通であり、日本でも同様の危険が存在することを認識させられます。
『監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影』(2020年)
監督:ジェフ・オーロースキー
出演:スカイラー・ギソンド、カーラ・ヘイワード、ヴィンセント・カーシーザー ほか
【あらすじ】
Google、Facebook、Twitter、YouTubeなどの大手テック企業の元幹部や開発者たちが、自らが作り上げたシステムの危険性や改善策について証言するドキュメンタリー。SNSやインターネットサービスがいかにユーザーの行動を操作し、個人情報を収集・活用しているかを内部関係者の証言と再現ドラマで描く。
【おすすめポイント】
現代のデジタル社会の闇に迫るNetflix制作のドキュメンタリー。シリコンバレーの元内部関係者たちの生々しい証言により、私たちが無料で使っているSNSやサービスの「本当のコスト」=「個人情報とプライバシー」が明らかにされます。印象的なのは、アルゴリズムによる情報操作や、依存性を高めるための心理学的手法が詳細に解説されている点です。フィクションの再現ドラマも効果的で、一般ユーザーがいかに巧妙に操作されているかを分かりやすく表現しています。
『スプリー』(2020年)
監督:ユージーン・コトリャレンコ
出演:ジョー・キーリー、サシーア・ザメイタ、ミーシャ・バートン ほか
【あらすじ】
ライドシェアドライバーとして働くカートは、ネット上で有名になることを夢見ている。しかし、SNSでの反応は全く得られない。そこで彼は、乗客を殺害する様子をライブ配信し、「バズる」ことを企てる……。
【おすすめポイント】
承認欲求とSNSの関係性を極限まで描いたサイコスリラー。『ストレンジャー・シングス』のジョー・キーリーが狂気的な役柄を熱演しています。現代社会における「バズりたい」という承認欲求の病的な側面と、ライブ配信文化の危険性を鋭く描き、ネット上での注目を集めるためならどんなことでもするという心理の恐ろしさを観客に突きつけます。
それぞれ異なる角度からインターネットとSNSが持つ危険性を描く5作品でした。サイバーいじめ、プライバシー侵害、児童への性的搾取、企業による個人データの収集・商品化、そして承認欲求の暴走。すべてが現実に起こりうる、あるいは既に起こっている問題です。そして、恐ろしいことに、それらは誰にでも起こりうる可能性を秘めています。便利で豊かなデジタル社会を享受する一方で、常にその影の部分についても意識を向け、適切なリテラシーを身に着けていくことが現代社会に生きる上で必須と言えるでしょう。