「小説が映画化されまくり」「中毒者続出」な作家・染井為人の視線とは?北村匠海も魅了された『悪い夏』

「小説が映画化されまくり」「中毒者続出」な作家・染井為人の視線とは?北村匠海も魅了された『悪い夏』
©2025映画「悪い夏」製作委員会
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「中毒者続出の極悪小説」まさかの映画化

第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞し「クズとワルしか出てこない」と話題を呼んだ染井為人(そめい ためひと)の傑作小説を映画化した『悪い夏』が3月20日(木・祝)より全国公開。数多くの傑作を作り上げてきた鬼才・城定秀夫が監督を務め、『ある男』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した俊英・向井康介が脚本を手掛ける。

©2025映画「悪い夏」製作委員会

主人公・佐々木守を演じるのは、映画・ドラマの大ヒットが続く北村匠海。真面目に生きるも、気弱な性格ゆえに犯罪に巻き込まれていく男の姿を渾身の力で体現する。

さらに、色じかけで佐々木を犯罪へと巻き込んでゆく育児放棄寸前のシングルマザー・愛美を演じる河合優実をはじめ、裏社会の住人で犯罪計画の首謀者・金本役に窪田正孝、正義感に燃える佐々木の同僚・宮田役に伊藤万理華、愛美に肉体関係を強要する佐々木の先輩・高野役に毎熊克哉、金本の愛人・莉華役に箭内夢菜、金本の手下でドラッグの売人・山田役に竹原ピストル、息子との困窮生活から万引きに手を染める古川佳澄役に木南晴夏など、豪華俳優陣が其々クズぶりを狂演する。

©2025映画「悪い夏」製作委員会

異業種から転身した作家の視線――俯瞰で見つめる人間の感情の機微

本作の原作者である気鋭作家・染井為人は、芸能関係のマネージメント職や舞台プロデューサーなどを経て作家に転身。2024年に公開され国内の映画賞を席捲している『正体』(監督:藤井道人)の原作も手掛けており、いま映画界からも熱視線を浴びている作家の一人だ。

「悪い夏」をはじめとする染井の小説は、ダークサイドに足を踏み入れてしまった人々の感情の機微を描いた作品が多いのも特徴といわれており、そこに描かれる人間の業とも言うべきむき出しの欲望は、滑稽でもあり愛らしくもある。「悪い夏」のあとがきでは、世界三大喜劇王の一人チャールズ・チャップリンの言葉にも触れていたが、決して善悪を問うことなく、他人をジャッジすることはしない染井の物語を読めば、そのまなざしが人間そのものに向けられていることがわかる。

監督の城定も、「うだるような暑さの中、右往左往する登場人物たちの駄目さやどうしようもなさは人間の愛おしさでもあると感じます」と(「悪い夏」の)感想を語っているが、明日は我が身か? と思わせつつ、可笑しみと楽しみが同時に押し寄せてくる絶妙なバランスが、読者を惹きつけているのだろう。

染井為人「悪い夏」

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『悪い夏』

市役所の生活福祉課に務める佐々木守(北村匠海)は「職場の先輩・高野(毎熊克哉)が生活保護受給者の女性に肉体関係を強要しているらしい」と同僚の宮田(伊藤万理華)から相談を受け、真相究明の手伝いを頼まれる。真面目で気弱な佐々木は、正義感に燃える宮田の頼みを面倒くさいと思いながらも断ることができず、その女性、育児放棄寸前のシングルマザー・愛美(河合優実)のもとを訪ねる。愛美は高野との関係を否定するが、実は裏社会の住人・金本(窪田正孝)、その愛人の莉華(箭内夢菜)、手下の山田(竹原ピストル)と共に、ある犯罪計画の片棒を担ごうとしていた。そうとは知らず、徐々に愛美へと惹かれてゆく佐々木。ふとしたきっかけで万引きを繰り返すようになってしまった生活困窮者・佳澄(木南晴夏)らを巻き込み、佐々木にとって悪夢のようなひと夏が始まろうとしていた……。
出演:北村匠海
   河合優実 伊藤万理華 毎熊克哉 箭内夢菜
   竹原ピストル 木南晴夏 / 窪田正孝

監督:城定秀夫
原作:染井為人『悪い夏』(角川文庫/KADOKAWA刊)
脚本:向井康介 音楽:遠藤浩二